以前聞いた話だと、夢というものは記憶として長期保存ができる性質ではないらしい。にも関わらず僕の脳裏には一週間前の夢の内容がはっきりと脳裏に刻まれていた。
(結局あれは何だったんだろう)
夢にしてはあまりにも長く鮮明に脳に刻まれた記憶。まるで、本当に過去にあった出来事を追体験しているかのようだった。それに、あの声……。あの声の主が僕の祖先のもので自分に子供を産ませ己の血を繋ぐために毎年自分を女にしていると自称していたが……。
「まさかね…」
僕は脳裏に浮かんだ考えを頭を振って追い払った。きっと気のせいだ。そうに違いない。あの声は僕の脳が勝手に作り出した幻聴なのだ。僕は自分にそう言い聞かせて無理やり納得させた。これ以上考えてはダメだと本能的に悟った。
「まあいいや。とりあえず今日を乗り切ろう」
僕は半ば強引に考えるのを止めた。そして、朝食を作るためリビングへと向かったのだった。
台所で支度をしていると、隆作が欠伸をしながら起きてきた。昨日は遅くまで店の仕事をしていたからなのか普段より目覚めが悪そうだ。朝起きて一番に机の上においてある新聞にざっと目を通すのが隆作の朝のルーティンだ。そう思い、朝食の支度に集中していた僕に衝撃が走った。
「ふわっ!?」
いきなり僕の両脇から腕が伸びてきて胸を揉みしだかれたのだ。犯人は考えるまでもない。後ろを振り向くと満円の笑みを浮かべた隆作がそこに居た。隆作は悪びれる様子もない様子で、さらに僕の胸を揉み続けた。
「葉月おはよー。今日もいい乳してるな~」
「こらっ、朝からそんなっ…!いま包丁持ってるんだぞっ。ふうっ、変な揉み方っ…!いい加減にっ…離れろ!!」
「何だ冷たいな。揉むどころか吸わせてくれたのに」
なんとか引き離し、隆作は満足そうに居間へと消えていった。
その瞬間、僕は朝からドッと疲れが押し寄せてくるのを感じた。
我ながら変な思いつきで過剰なサービスをして不思議な夢を見た日の夜から早一週間。隆作は毎日こんな感じだ。というよりは、あの日以来彼の欲望の枷が外れたかのごとく僕にセクハラを仕掛けてくる頻度が格段に上がった。今みたいに胸を揉みしだかれるわ、お尻を撫でてくるわ、隙あらば体を密着させてくるわで、正直鬱陶しいことこの上ない。しかもタチの悪いことに、以前と違い隆作にちょっかいをかけられるたびに感じたことのない変な感情が沸き上がり始めていた。
例えば一昨日酔っ払って僕に絡んできた時がそうだ。スマホに表示されたセクシーランジェリー専門の通販ショップの画像を見せて「今日注文したら明日には届くらしいぞ。どれが着たい?」なんてニヤニヤしながら聞いてくるもんだから、その時ばかりはさすがの僕もついカッとなって隆作の顔面を本気で殴ってしまったが後悔はしていない。まあ、その後すぐに土下座して謝ってくれたから許してあげたけど……。そんな土下座する隆作が、その、なんと言うか可愛らしく見えて普段ならボコボコにしてとっちめてやろうと思うような怒りすら湧かなかった。それどころか、できれば隆作の意向を汲んであげたくすらなったのだ。今思い返してもエッチな衣装のひとつやふたつお披露目してもいい気すらしている。
いや、もしもだ。もし、本当にあの派手で男の欲望を煽るようなデザインの下着を身に着けた僕を見たら隆作はどんなリアクションをするだろう。ふと、妄想してしまう。場所はこの家。時間は深夜。無理矢理着せられる形で露出過多なランジェリーに身を包んだ僕が隆作の前に姿を表す。派手なレースがあしらわれた面積の小さいブラを押し上げる胸の2つの豊かな膨らみ、臀部の輪郭を美しく際立たせるショーツに覆われた肉付きの良いお尻。そして、胸や尻に絡みつく視線。隆作の興奮した息遣い。そして、僕の羞恥心を煽るように言葉責めをしてくる。
「こんなエロ下着で誘惑するなんて、葉月もとんだ変態だな」
「その巨乳といいデカい尻といい、最近まで男だったとは思えない体だ」
「ほら、もっとよく見せてくれよ。おお凄いな、美人だからこんなスケベな格好もよく似合ってるぞ」
「どうした、顔が真っ赤だぞ。そんなに興奮したのか、どうされたいんだ?ん?」
辛抱できなくなった隆作は僕に抱きつき強引に押し倒す。僕も当然抵抗するが、そこは男と女の力の差。あっさり床に押し倒し唇を奪い強引に行為に及ぼうとする隆作。僕にもは成すすべはなく初めてを散らされ…。
そんな妄想が頭を過るたびに体が火照ってくるのを感じる。僕は慌てて頭を左右に振って邪念を振り払った。
(な、何を考えているんだ僕は!こんな変な妄想を!!)
先程の妄想の余韻なのか、体の芯が熱くなりお腹の奥がキュンと疼いてしまう。これは一体何なのだろう。自分の中で得体の知れない感覚が生まれつつあったことに恐怖さえ感じ始めていた。
その夜のこと。夕飯も終わり、お風呂にも入り後は寝るだけという頃。廊下の台の上に置かれた固定電話のコール音が鳴り響いた。
「え?こんな時間に誰からだろう?」
不思議に思いつつも僕は受話器をとった。すると聞こえてきたのは聞き覚えのある声だった。
「ああ葉月。俺だ。隆作だ」
呼吸を置かず隆作は用件を告げる。
「少し用事ができてな。すぐ店の方に来てくれ。待ってるからな」
電話は切れた。
これはどういうことなのだろうか。今のような電話が店からかかってくることなど稀だ。そして、隆作が突拍子もない提案をするときは決まってろくでもないことを企んでいるときと相場は決まっている。例えば僕が女になった12日前の出来事がいい例だろう。唐突に温泉に入りたいとせがんだ隆作だが、その真意は女になった僕の裸が見たいだけだった。今回だって正直言って嫌な予感しかしない。どうせろくでもない企てを思いついたに違いない。それを察して尚、僕の胸は少し高ぶっていた。
下衆な妄想を滾らせた隆作の目の前に僕が無防備な姿を表せば彼はどんな反応をするのだろう。
そんな考えが頭を過り僕は頭を左右に振った。
(ダメだ、ダメだ!何を考えてるんだ!!)
僕の中で得体の知れない感覚が芽生えつつあったことに恐怖さえ感じ始めていた。それでも、だからと言って行かないわけにはいかないだろう。恐怖と期待を携え店へと向かったのだった。
店の前に着くと明かりが点いていた。どうやら、隆作はまだ店の中にいるようだ。
入口の引き戸に手をかけるとすんなりと開くことができた。鍵はかかっていなかったのだ。ドアを開け店内に入るとそこには普段と変わらぬ様子の隆作がカウンターの奥に立っていた。服装も特に変わりはなく普通に店で働いている時のままといった感じだ。さらに、隆作に向かい合う形でカウンターの席に一人の客が座っている。気だるそうな表情のを浮かべた白髪で小柄の眼鏡をかけた老人だ。
「中山先生!」
「久しぶりだな葉月。ちょっと目を離した隙に随分大人になったな」
腰を掛けていた気だるそうな表情の老人の顔が僕を見た瞬間明るくなり立ち上がった。中山先生は、僕の小学校の頃の恩師だ。そして、隆作と同じく僕が一年のうち限られた期間だけ女になることを知っている人物でもあるのだ。今まで周囲にこの体質のことが知られず生活できたのはこの先生の協力のおかげ。小学生の時、隆作と共に当時担任だった中山先生に特異体質のことを打ち明けると、疑うどころか親身になって相談に乗ってくれた。女になったときは学校を自然に休めるよう取り計らってくれた。さらに、小学校を卒業した後も長年教職を務めた故の顔の広さを利用して僕の進学先の中学や高校に女体化する時期は長い休みが取得できるよう手を回してくれたりもした。中山先生は僕の体質を知る数少ない人物の一人であり、僕が一番信頼を寄せている大人だ。隆作を除けば唯一僕が女体化する苦労に理解を示してくれる人でもある。だから、僕はこの人が大好きだし尊敬もしている。
「こんな夜遅くに一体どうしたんですか?」
「今日は偶然遊びに来ただけなんだ。一杯か二杯引っ掛けて退散しようと思ってたんだが。隆作さんとの話は思った以上に弾んでしまってな」
「で、せっかく先生がいらっしゃったんだから葉月も呼ぼうって流れになったわけだ」
隆作がはそう答えた後、カウンター越しに二つのグラスを僕に向かって差し出してきた。
僕はそれを受け取ると、隆作は冷蔵庫から取り出した氷をグラスに入れ、そこにウイスキーを注ぐ。そして、そのグラスの片方を中山先生に渡した後、自分の分も作った。
それからは主に昔話を肴に酒が進んだ。喋っているのはほとんどが中山先生。初めて女体化する人間の存在を知ったときの驚き、そして僕の体質を周囲に誤魔化したときの苦労話や学校の仕事についての思い出。あと、話が飛んで先生が趣味で研究してる民俗学の話題も語っていた。僕は相槌を打ちつつ聞き手に徹し、隆作はたまに話に加わる。思いの外、楽しい時間が過ぎていき気がつくとお酒の量も増えていった。
「先生、飲み過ぎですよ」
「いいじゃないか。こうして飲むのは久しぶりだし。それに、今日はなんだか気分が良くてな」
「たまには飲みたい日もあるでしょう。気持ちはわかりますが程々にしてくださいよ先生」
隆作が賛同し苦笑いする。僕もそれにつられて笑うと、先生の顔にも笑みが浮かんだ。
「そういえば、葉月は今年で幾つになったんだっけな」
「今年で22歳になりますよ」
「そうか・・・もうそんなになるのか。担任だった頃の幼い子供イメージがあるものだから実感は湧かないがもう立派なオトナなわけだ」
先生は遠い目で僕を見つめるとグラスを口に運ぶ。そして、残ったウイスキーを一気にあおった。
夜も深まり、酒も2杯3杯と進んだところで中山先生がぽつりと切り出した。
「それにしてもあの葉月がこんな風になるとはな。卒業して10年、すくすくと育ったもんだ」
中山先生が僕を見ながら漏らした言葉は久々に再会した教え子が成長していたことに対する感無量さを表現しているものだと思ったが、実際の所はどうやら違うような気がする。その疑念が確信に変わったのは中山先生が隣に座る僕にさり気なく向けてくる視線が胸元やお尻に注がれていることに気付いたからだ。そして、中山先生の細めた目元に漂うかすかな下心にゾクリとした寒気を感じると同時に先程の言葉の裏に隠された本当の意味に感づいてしまうのだった。
(間違いない。先生、僕のことやらしい目で見てる…)
頭の中は僕も男のままだからその手の欲望を男が持つことについては理解を示せる。ただ、性欲やスケベ根性をまるで隠さない隆作と違い真面目な中山先生まで自分を性的な目で見ている事実は少なからずショックだった。先程の言葉もかつての生徒が大人になったことを喜んでいたわけではなく、女体化した僕が子供の頃と違い見事なまでに女性らしい体つきになったことを指していたのだ。当たり前だが、子供の頃の僕は女になっても体型は男の時とさして変わらなかった。だが今は違う。女性を象徴する部位の出っ張りは平均的な成人女性より遥かに立派なものになっており、自分で言うのも何だが顔立ちも目が大きく鼻筋が通って大人の女性としてはなかなかに魅力的な作りになっている。
「葉月、お前いい女になったなぁ」
中山先生の言葉に僕は動揺を隠せず曖昧な返事をしてしまう。隆作も隣で「へえ」と意外そうな声を上げた。
「あの葉月がこんなに女らしくなるとはな・・・正直驚いたよ」
酒のせいで理性は溶けてしまったのだろうか。先程までは隙を伺うように体に向けていた視線を堂々と投げつけ始める。中山先生は僕の全身を舐めるように見回す。その視線はまさに獲物を狙う獣のそれだ。
「すっかり大人になったなぁ・・・胸とか尻とか凄いじゃないか。隆作さんの言ってた通りだ」
「えっ、それって…?」
中山先生が言うにはこうだ。気晴らしに飲もうと店に入った。客は誰もおらず相手は店主の隆作のみだった。安酒を飲みつつ取り留めもない話を数十分ほど交わすも、男同士でのわびしい呑みに退屈を感じ始めた時に隆作が最近僕が女体化していることを話題に上げたのだ。中山先生は奥の体質のことを知っているのでその事自体には特に驚きはなかったらしい。ただ、そこで隆作が僕の容姿や体を褒めたそうだ。先生の元を卒業して10年、葉月は立派に育っている。胸や尻の肉付きがそこいらのグラドルより遥かにに良いとか、ウエストのくびれがエロいだとか、脚も長くて綺麗だとか……そんな具合に。かくして、その話が本当かどうかを確認するため家にいる僕に電話をかけたそうだ。つまり、僕が店に呼ばれたのは隆作と先生が僕の体を堪能するためだったのだ。それを聞いて愕然として呆れ果てる僕をニヤニヤしながら隆作を見て僕は頭を抱えたくなった。
「教え子の成長した姿を目に焼き付けてる。教師冥利に尽きるなぁ」
「折角の機会だ、先生。もっと見てやってくれよ。こいつのけしからん発育具合を」
ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべる2人の視線が僕の肢体を頭からつま先までじっくりと舐め上げる。身悶えするかのような羞恥心と同時に全く別の感情が芽生えてくる。覚えのある感覚だ。一週間前に隆作からおっぱいを吸わせてくれと頼まれた時のあの熱に浮かされたような奇妙な気持ちだ。
(なぜだろう、むかつくけど不思議と悪い気はしない。むしろ2人の欲望に応えたくなるような…)
そんな僕の心を見透かしたかのように、隆作は僕を店のバックヤードへ「新しい酒を運ぶから手伝ってくれ」と手招きした。
「何の用だよ。店の裏に呼びつけて」
どうせ酒を運ぶ仕事は方便なのだろうから、僕の方から口火を切った。
「葉月。お前、先生に恩返しする気はないか?」
「唐突に何言ってるんだよ?」
「言葉通りだの意味だ。子供の頃、熱心に教導してくださった中山先生がこうして店を訪ねてくださってるんだぞ。その恩に報いる気持ちくらいはあるだろ?」
「それは……」
「それに堅物そうに見えて先生は俺の目から見ても好き者でな。昔はよく店で酒を飲みながらテレビに出てる女優やグラビアアイドルの中で一番エロいのは誰か語り明かしたこともあったっけな。そんな先生が今、お前に興味津々なんだ。ちょっとくらいサービスしてやってもいいじゃないか」
「何を勝手なこと言ってんだよ!僕は先生のオモチャになるつもりなんかない!」
「そう言うなよ。さっき先生にエロい視線向けられた時、満更でもない顔してたじゃないか?」
隆作の指摘に思わずドキリとしたが、ここで動揺を見せてはいけないとぐっと堪えて平静を装う。しかし、隆作は僕の心中を洞察したかのように追い打ちをかける。
「前に俺にやってくれたようにそのデカい乳と尻で癒やしを提供してやれよ」
「ううっ…」
あの日の恥ずかしい思い出を蒸し返され、思わず押し黙ってしまう。
「先生のご指導ご鞭撻のお陰でボンキュッボンのナイスバディに成長できました、なんて言ったらあの人きっと喜ぶぞ」
「だ、誰がそんあ恥ずかしいこと言うか!」
「そうそう。あっちにあるロッカーにお前の魅力を存分に引き出す良いものが入ってるからな。使うかどうかはお前に任す」
そう言って隆作は店へと戻っていった。
ぽつんとバックヤードに取り残され、僕はしばし呆然とした。隆作の言葉には腹が立ったが、決して的外れなことを言っているわけではないのはよく分かっていた。実際、僕はあの先生のスケベな視線に晒されて少しドキドキしてしまっていたのだから。もし、この肢体を存分に先生に見られたらどんな感情に支配されてしまうのか……そう思うと不安で胸がいっぱいになる。しかし、同時に心の奥底に男のねっとりした肉欲に応えたいという秘めた欲望として芽生えていた。
(先生が僕のことをそういう目で見ているなら願いを叶えてあげても……)
思わず、はっとする。
そう言えば、隆作が言っていたロッカーの中にある自分の魅力を引き出すものとは何だろう。黒い好奇心に突き動かされてバックヤードの隅にあるロッカーを恐る恐る開ける。そこには、ある意味ではこれ以上無い程に酒場に似つかわしい衣装が入っていた。なるほど、これを着こなすには相応に女性としてのスタイルの良さが求められる。そういう意味では、隆作が自分お魅力を引き出すものと言っていたことは間違っていない。だが、こんなものを着て人前に出るのはゴメンだ。そう思い、ロッカーを閉めようとしたときだ。
『どうした、教え導いてくれた者に艶姿を見せるのも一興ではないか。何も躊躇うことはない』
あの夢に出てきた声がハッキリと僕の脳に響き渡り思考が白く染まっていった。
気がつくと僕は着ている衣服を全て脱ぎ、黒い肩出しのボディスーツを身をつけ網タイツを足に通し手首にカフスを装着、さらに首に蝶ネクタイ付きの襟を付けた。そして最後の仕上げに2本の長いうさ耳付きのカチューシャを装着した。誰もが知る盛り場の華たる衣装に着替え終えた僕は店へと戻った。
店内に戻ると、中山先生と隆作がグラスを傾けながら談笑していた。しかし、僕が戻ってきたことに気付くと2人は僕の方を見て目を丸くした。無理もないだろう。いきなり僕がバニーガール姿で現れたのだから驚かないはずがない。しかも、その着こなしが我ながら完璧なのだ。ボディスーツを押し上げる豊満な乳房、キュッと細く締まった色っぽい腰つき、大きな体積を持つお尻はハイレッグにより形が丸わかりな上タイツが食い込み肉感を強調、そして太ももから足首にかけて女性としては背が高い故の長い脚線美のラインがまさに極上の一言だ。そのどれもが僕の女性としての魅力を存分に引き出している。次の瞬間には隆作はいやらしい視線が僕の全身を這わせはじめ、中山先生は驚きのあまり言葉を失いつつも目は僕に釘付けになっている。僕は恥ずかしさのあまり顔が熱くなるのを感じたが、同時に奇妙な高揚感も感じていた。僕は2人の視線を感じながらもカウンターへと向かい、グラスに氷を入れる作業を始めた。そして、そのグラスを持って中山先生の隣に座った。すると、先生は我に返ったかのように僕の体を上から下まで舐めるように見つめ始めた。
「その格好…」
「これは、その。余興と言うか酒の席を少しでも楽しんでもらおうと思って…」
「そ、そうか。それは嬉しいな」
先生の口元が緩むと、グラスの酒を一気に飲み干しておかわりを要求する。僕は先程より多めに氷を入れて新しいウィスキーを注いだ後、先生に手渡した。先生はそれを一気に飲み干すと、僕の方を抱き寄せて胸の谷間を覗き込んだ。
「おおっ、こりゃ凄い!本当にけしからんおっぱいだ!」
「ちょっ、先生……いきなり何するんですか!?」
「いいじゃないか。いやあ子供の頃に女になった時の姿は何度か見てるがあの時とは大違いだ、ここまで成長するとは驚きだぞ」
アルコールと僕のバニーガール姿のせいで先生の理性は崩壊しているようだ。
「胸もいいが、個人的に最も優れている部位は…。そうだ、葉月。立ち上がって」
「えっ?」
「いいから早く。そう。そんであっち向いてくれ」
先生に促されるままに立ち上がり方向転換する。逆らおうと思えば無論簡単にできたが何が起きるかわからないゾクゾクした感覚に負けて言うことを聞いてしまう。先生と隆作に背中を向ける形で直立する。
「うーん。やっぱり素晴らしい。この尻は国宝モンだ」
そう言って先生の手が僕の尻を触った。いや、触ったなんて言う生易しいタッチではない。まるで猛禽類が小動物を捕獲するかの如き力強さで臀部をがっしりと掴まれたのだ。その際に生じたゾクリとした感覚で思わず体が震えてしまい、ボディスーツに付いている丸いポンポンも揺れる。
「ひゃわっ!なっ何を!?」
思わず先生の手から逃れようと距離を置こうとするも、その動きを予見していたかのようにもう片方の腕の抱え込まれ失敗する。そしてそのまま後ろから下半身に抱きつくように体を密着させてきたかと思うと、僕のお尻に頬擦りしはじめた。
「ひいいいぃっ!!せ、先生!?何してんですかっ!!」
「何って、お前の尻を愛でてるんじゃないか」
「や、やめてください!お尻がぞわぞわするっ!」
先生は僕の抗議を無視して執拗に尻への愛撫を続ける。その感触にくすぐったさと快感が入り混じったような不思議な感覚を覚える。僕は堪らず身をよじるも先生の拘束からは逃れられず、むしろその動きが刺激となり余計に強く抱きしめられてしまう始末だ。
「葉月の尻は最高だな……こんなに大きいのに柔らかくて張りがあって弾力もあって……」
「そ、そんな恥ずかしいこと言わないでくださいっ!」
「恥ずかしがることなんかない。こんな美しさと妖艶さを併せ持った素晴らしいヒップはそうはお目にかかれないぞ」
先生は僕のお尻に頬擦りしながら熱っぽく語る。そして、今度は両手で左右の尻たぶを鷲掴みにして揉みしだいてきた。その感触はまるで餅でもこねるかのような力強さで僕の下半身を蹂躙する。
「しっとりすべすべできめ細やかな肌触りが堪能できるなんて夢みたいだ」
「こ、こんなのただのセクハラじゃ……ひゃん!」
そこからは先生と強引に隣に座らされた僕の僕と先生の攻防が続いた。攻防と言っても実に一方的な展開だ。僕に伸びてくる手から体を守ろうと試みるも、そのことごとくをかわされ逆に体に触れられてしまう。伸びてくる手は僕の防御をすり抜け胸を、腰を、太ももを這いずり回るように蹂躙する。
「先生!ちょっといい加減にしてくださいよ!」
「いいじゃないか、減るもんじゃなし」
「僕の精神がすり減ってるんですよ!」
「まあまあ、そう言わずに。ほれほれ」
「ふああっ!?ちょ、どこ触ってるんですか!」
先生は僕の太ももや腰回りを撫で回す。その動きは洗練されていてとても優しくてそれでいていやらしい手つきだった。触れるか触れないかの絶妙なタッチでお尻から脚の付け根、膝の裏などを刺激されるとぞくぞくした感覚が体を駆け抜け思わず力が抜けそうになる。それを察したのか先生はすかさず手を前に回してきたかと思うと、僕の胸を思いっきり揉みしだきはじめた。
「ひゃわん!?な、なにを、してっ、ふうっ…!」
「なるほど。こういう触り方をされるのが好きなのか。しばらく見ないうちに葉月は体つきどころか中身もいやらしくなったもんだな。この胸の感触といい、肌のきめ細かさといここまで見事な女体はそうお目にかかれないぞ」
「やっやめて、これ以上は…ひぃゃあん!」
先生は僕の言葉を遮るかのように、さらに強く胸を掴んできたかと思うと今度は優しく撫で回すように愛撫し始めた。緩急をつけた巧みなテクニックで僕を攻め立てる。その巧みな指使いに思わず声が出てしまいそうになる。しかし、そんな僕の反応を楽しみながら先生はなおも執拗に攻め立ててくる。当然、抵抗はしたがそれでも先生の手が僕の胸を触り続けることを止められなかった。女性としての快感に体が反応してしまう。
「どうだ?気持ちいいか?」
「き、気持ちよくなんか……ないですっ!」
その時、いつの間にかカウンターの奥から僕の隣の席へ移動した隆作が話しかけてきた。
「葉月、お前今自分がどんな顔してるか分かるか?」
「えっ?」
「大きな目が潤んで頬は紅くなってて息も荒い。その上、唇は半開きで妙に艶かしい。どこからどう見たって完全に発情したメスの顔だぞ」
「なっ!そ、そんなわけっ……」
僕の言葉を遮るように隆作と先生の欲望にぎらついた手が両サイドから伸びてくる。これが2人にとって宴の始まりだと言わんばかりの勢いだった。
「ひぐっ……やめっ……」
「おっ、またそんな可愛い声出した。いやーいい乳してるなー。あのあどけない子供だった葉月がここまで育つもんなんだな、感心するよ」
「ほらほら、先生。教え子の成長を今夜はじっくり堪能していってくださいね。こんなスケベな体した女、レースクイーンやグラドルでもなかなかお目にかかれないでしょ」
「ああ、まったく。葉月には感謝してもしきれないな。この素晴らしい肉体でたっぷり楽しませてもらうことにしよう」
「ちょっ、何を言ってるんですかっ!いい加減にしてくださいよっ!…ひぃっ!?む、胸をそんなに乱暴にっ、んんっ…!!そんな変な手つきで太もも撫でられたらっ…はぁ…はぁ…今度はお尻っ!?ひゃうんっ!!」
「うんうん、この巨乳と形の良い大きな尻。これが両立していなければバニースーツは着こなせない。葉月がここまでスタイル抜群な美女になるとはなぁ。特にこの尻は見事と言うほかない。乳は100点満点中100点だが尻は120点をあげてもいい程の珠玉のヒップだ」
「先生には悪いけど葉月はやっぱり胸だと思うな。ハイレベルな争いではあるけど、形と大きさ共に最高峰の質を維持したおっぱいに勝るものは無し。ムッチリした尻もエロいけどやっぱり葉月のおっぱいは触り心地どころか吸い心地まで素晴らしすぎるからな」
それから2人は僕の言葉など聞く耳も持たずに欲望に任せて胸や尻に手を這わせギトギトした性欲に満ちた感想をぶつけてくる。抵抗しようとするも敏感な部分への刺激のせいで思うように体に力が入らない。
その時だ。2人に体を弄ばれる嫌悪感と抵抗心とは別に妙な感覚が心の片隅に一欠片ほどではあるものの芽生えつつあったことを自覚した。ほんの少しではあるものの自分に欲望を向ける2人の男に妙な親近感と愛着すら感じている自分がいる。その気になれば2人の手を振りほどき店の外へに逃げることだって出来なくはないのに、それを実行しないのが良い証拠だ。僕は心のどこかでこの状況を楽しんでいる。2人の男が自分の体に魅了されているというこの状況に。
「葉月、そろそろ観念した方がいいんじゃないか?」
「本当はこんなに喜んでるくせに」
「そ、そんなことありません!僕は絶対にっ……」
2人の言葉に反射的に言い返すが、言葉尻が弱々しくなってしまう。これが男性経験のない僕だからだろうか?それとも相手が隆作と中山先生だからだろうか?いや、きっとその両方なのだろう。この2人相手なら何をされても構わないと思っている自分がいる。
「そうか、じゃあもっと激しくしても大丈夫だな」
「えっ?」
そう言うと先生は僕の胸を揉みしだきながら首筋を舌で舐め始めた。その舌の生暖かい感触に背筋がぞくりとすると同時に体がビクンと跳ねてしまう。その反応を見た先生はさらに調子に乗って僕の体を貪るように愛撫し始めた。
「あっ、やっ……そんなとこ触らないで……」
「いいぞ。その恥じらいの表情。葉月、可愛いな」
「先生ずるいですよー。俺も!」
さらに隆作が僕の太ももに手を這わせる。隆作の手が脚の付け根へと伸びると同時にボディスーツがキュッと股に食い込む感覚に、思わず声が出そうになる。しかし、その反応を見て気を良くした2人はさらにエスカレートしていった。
「うんっ…!?そんな変な触り方っ…!!ああっ!!」
「すごいな、身震いするたびにおっぱいが躍動感いっぱいに揺れる。こりゃあ凄い、大迫力だ」
先生の手が僕の胸元からお腹の辺りまで下りてきて、優しく撫で回す。その手つきはあまりに優しくてかえってこそばゆく感じてしまうほどだった。そんな手つきとは裏腹に先生の指先は確実に性感帯を刺激してくる卑猥な触り方をしていた。
「良かったな葉月。先生はすっかりお前の体に夢中だぞ」
一方の隆作の手は太ももをいやらしく撫で回し、時折お尻にまで伸びてくるものだからその度に体がビクッと反応してしまう。
「葉月はやっぱり敏感だな。ほら、ちょっと触っただけで体がビクッと反応するぞ」
「いやっ、そんなことっ…無いっ…!」
「はいはい。葉月ちゃんは強情ですねー」
隆作は子供をあやすような口調で言うと僕の耳元に顔を近づけて囁いてきた。その声がくすぐったくてまた体をビクつかせてしまう。
そのショックが引き金になったのか、数日前に夢に出たあの光の球体の言葉が頭に響く。
『私の血を引き継いだ生命をこの星に1つでも多く誕生させてくれ。これが私の望みだ』
今にして思えば、確信を持って断言できる。あの夢は本当だった。僕が女になったのは子を産むためなのだ。だからここまで男に無遠慮な欲望を向けられても受け入れてしまうに違いない。それを自覚した途端、僕は急に恥ずかしくなった。自分は女ではないはずなのに、そう言い聞かせようとするも体が言うことを聞かない。それどころかもっとして欲しいと思っている自分がいる。この2人なら何をされてもいいとすら思い始めていた。
そんな僕の煩悶などお構いなしに2人は僕を揉みくちゃにし続けた。やがて2人が満足することには僕は性も根も尽き果てカウンターの机に顔を突っ伏して形で息をするほどに憔悴していた。
「さあ、宴もたけなわだ。最後に先生にいいお土産を提供してあげようじゃないか」
「えっ、それってどういう…」
すると、先生がスマホのカメラアプリを起動させながら言った。
「せっかくバニーちゃんの格好をしてるんだ。思いっきりセクシーなショットを思い出代わりに撮らせてくれ、頼む」
僕にはもはや抵抗する気力も体力も残っていはいなかった。
だから、もうどうにでもなれと投げやりに答えた。
「もう好きにしてくれ……」
「よしきた」
こうして僕を主賓にした欲望に満ちた撮影会が幕を開けた。
「葉月、もっと脚を開いて」
「こ、こうですか?」
「そうそう。そのまま動かないでね」
先生は僕の股の間にスマホを差し入れるとシャッターを切った。フラッシュが焚かれパシャリと音がするたびに僕は恥ずかしさで顔が熱くなるのを感じた。しかしそんな僕とは対照的に2人は実に楽しそうだった。
「ようし。次はそのでっかいお尻をこっちに向けてみようか」
言われるがままカウンターに手をついて尻を突き出すような体勢になる。尻を目一杯カメラの方向に突き上げた瞬間、スマホのシャッター音が鳴った。
「次はこっちを向いてくれ。そう、そのポーズだ」
今度は仰向けになって胸を強調するような体勢になるよう要求された。2人は僕の体を舐め回すように撮影する。特に胸のあたりは念入りに撮られた気がする。
その後もグラビアアイドルですらやらないような際どいポーズでの撮影は続いた。この恥辱の時間を少しでも早く終わらせるために少しでも彼らの欲望を満足させてお開きにしたかったので、唯々諾々と彼らの指示に従い続けた。
「よし、これで最後だ。葉月、両手を頭の後ろで組んでくれ」
「こ、こう?」
言われるがまま両手を頭の上に持っていくと、先生は僕に向けてスマホを構える。先生の手が素早く胸元へと伸びた。次の瞬間には胸元に手がかかり、ボディスーツを力任せにずり下げていた。収められていた大きな乳房が反動でぶるんと震えると同時にスマホのシャッター音が響いた。先生はスマホの画面を見ながら満足そうに頷き、僕はあまりの恥ずかしさに顔から火が出るかと思った。
次の日、僕の元には先生から『一生の宝物にする、ありがとう』という短い文言のメールが届いた。添付された画像には、物凄く恥ずかしそうな表情で形の良い大きなお尻を向けたり驚いた表情でボディースーツから乳房を露出させたバニーガール姿の僕の写真が送られてきた。
その日以降はいつもと変わらない日々が続いた。しかし、僕の心の中ではあの2人に体を弄ばれの記憶がずっとこびりついていた。そして、確かにあの時、あの2人の欲望を受け止めることが自分の使命であり喜びであると思っている自分がいた事も脳裏に深く焼き付いていた。そんな思いを頭の片隅に追いやり、僕は努めて平静に振る舞い続けた。いや、厳密には見て見ぬふりをしていたのだ。そうでなくては得体のしれない感情に塗りつぶされ自分が別のものに様変わりするような恐怖さえ抱いていた。
そして、僕が女になって15日目を迎えた。僕が女の姿でいるのは今日で最後になるはずだ。ただ漠然と何かが起きるという、うっすらした予感だけは不思議と感じていた。
その日の夜、隆作は酒の匂いを漂わせて帰ってきた。
「ただいまー」
「おかえり。今日は随分と飲んできたみたいだな」
僕は呆れ半分、心配半分といった調子で隆作に言った。隆作は酒を扱う店を経営しているからなのか、たまにこういう日がある。まだ夜の7時頃だと言うのに足元もおぼつかない様子で玄関先に座り込んでしまっている。
「おい、大丈夫か?」
「うーん。葉月ぃ……動けないんだ。ちょっと手伝ってくれ…」
「おいおい……」
仕方なく、僕は隆作に肩を貸して立ち上がらせる。そして、そのまま隆作の部屋へと続く廊下に歩き出した。
「ほら、しっかりしろ。もうすぐ部屋に着くぞ」
「うー、ありがとう葉月……」
襖を開け、畳の上に敷かれた布団の前にまで来た。その時だ。不意に隆作の足が僕に絡みそのままバランスを崩し倒れ込んだ。僕は隆作に押し倒されるような格好になってしまった。
酒臭い息が顔にかかる。隆作の息遣いが荒いのは酒のせいだけではないようだ。その目はトロンと蕩けていて焦点が定まっていないように見えた。そんな目で僕を見つめながら、彼は語りかけてきた。それはまるで発情した獣のようだった。
「葉月。お前のことは子供の頃からずっと見てきたが本当にいい女になったな」
「隆作…?」
突然のことに頭が追いつかない。しかし隆作はそんな僕を他所に言葉を続ける。
「子供の頃は女になってもあどけない感じの面だったけど、よくここまで立派に大人の女の顔になったもんだ」
「な、なにを言って……」
「体も最高だ。背がすらっと高くて腰のくびれも色っぽい。胸や尻なんて、よくここまで育ったもんだ。それに何よりこの匂いだ。男を誘うような甘ったるくていい匂いだ。男sに戻る前に…」
「や、やめろよ……」
「明日には男に戻るんだろ?なら、その前にいい思いさせてくれ!!」
隆作の顔がいきなり近づいた。そして、そのまま強引に僕の唇を奪った。
「んんっ!!むぐっ…くうっ…」
必死に隆作を押しのけ接吻から逃れようとしたが完全に上から覆いかぶさったような体勢が災いし上手くいかない。もたついている間に酒臭い舌が僕の口腔を蹂躙する。頬の内、歯茎、歯の裏側まで入念に舐め上げる。さらに仕上げとばかりに僕の舌に絡みついてくる。まるでそれ自体が生き物のように動き回る舌は僕の口内を犯しつくすかのように暴れまわる。
息が苦しい。頭がクラクラする。あまりの激しさに意識が飛びそうになるほどだ。
「ぷはっ……はぁ、はぁ……」
ようやく解放された時、僕は完全に息が上がっていた。隆作はそんな僕を見下ろしながら言った。
「どうだ?気持ちよかったか?」
「ううっ、こんなのっ……」
「まだ終わりじゃないぞ」
隆作は僕の首筋に舌を這わせ始めた。ぬるりとした感触に思わず身震いする。そしてそのままタンクトップから覗く鎖骨をなぞるように舌を動かす。
「ひゃあんっ!」
思わず変な声が出てしまい慌てて口を塞ぐ。隆作はそんな僕を見てニヤリと笑うと執拗に同じところを責め続ける。その度に僕はビクビク震えてしまう。
「やっ、やめっ……そこはダメだって……!」
「まさかこんなに感じるなんてな、こりゃあたっぷり可愛がってやらないとな」
そう言ってまた同じ場所を舐め上げる。今度は先程よりも強く吸われた気がした。その瞬間、全身に電流が流れたかのような衝撃が走る。
(な、なんだこれ……?)
今まで感じたことのない感覚に戸惑う僕の都合はお構いなしに隆作は愛撫を続行する。
「んんんっ!!」
再び声が出そうになるが、なんとか唇を噛んで耐える。しかし隆作はその隙を見逃さなかったようですかさず僕の胸に手を伸ばしてきた。手には収まりきらない大きな膨らみをタンクトップ越しに力強く揉みしだく。その手つきは明らかに愛撫のそれだった。
「やだっ!そこっ、触るなぁ……」
必死に懇願するも聞き入れてもらえない。それどころか逆に激しくなっていく一方だ。タンクトップの上からでも分かるほどピンと立った先端部分を摘まれると今までに味わったことのない衝撃が体を走った。
「ひゃわっ!」
「前におっぱいしゃぶった時より感じてるじゃないか。よし…!。そんなに気持ちいいならたっぷり“生”で弄ってやるぞ」
「や、やめろぉっ!!」
隆作の右手が僕のタンクトップの裾に手をかけ一気にめくり上げた。
「おおっ!相変わらずでかいなぁ。それに綺麗なピンク色してるじゃないか」
「み、見るなぁ……」
「ノーブラとは感心しないな。そんな立派なものを持ってるなら下着で保護しないと駄目だろうに」
「こ、これは…今日はもう寝るだけだったから…。わあんっ!!」
羞恥心で顔が熱くなるのを感じる。しかし隆作はお構いなしに顔を近づけるとそのまましゃぶりついた。
生暖かい感触に思わず声が出てしまう。そして今度は舌を使って先端部分を舐め回し始めた。同時に左手はもう片方の胸に伸びてきて同じように愛撫を始める。無理矢理に両方の胸を同時に責められるという初めての感覚に僕はもう何も考えられなくなっていた。そのまま正気を失ってしまえばまだ幸せだったかもしれない。時折、先端を前歯で転がされる感覚に電気が走ったように腰が跳ね上がってしまい意識を失うのすら許してはくれない。
「やだっ、もうやめっ……!これ以上されたらおかしくなる……」
「葉月が可愛すぎるのが悪いんだ。それにまだ始まったばかりだぞ?」
隆作はそう言うと再び僕の唇を奪った。今度はさっきよりも激しく貪るようなキスだった。先程にも増して口腔を入念に舐られる。その感覚に背筋がぞわりとしてしまう。
「ううんっ……ちゅぱっ……はぁ……」
長い口付けの後ようやく解放された時には既に抵抗する気力もなくなっていた。
「さてと、そろそろ本番といこうか」
隆作はそう言うと今度は僕のショートパンツに手をかける。何をしようとしているのかは明白だ。それだけは何としても阻止しないといけない。決死の思いで、僕はあの日の夜の夢の内容を隆作に明かしすことにした。それで隆作が行おうとしているおぞましい乱暴狼藉を思い留まる確信はなかったが、それでも一縷の望みに賭けるしかなかった。
不思議な光の玉が現れ、僕が毎年女になる理由を話したこと。自分がかつて月からやってきた生命体の末裔であること。毎年女になるのは、その子孫を産むためだということ。
それを黙って聞いていた隆作は少しだけ考え込んだ様子を見せた後で口を開いた。
「葉月。それは作り話じゃないんだな?」
「ああ、本当だ。信じられないかもしれないけど……」
「いや信じるぞ」
隆作はあっさりとそう言った。拍子抜けした僕は思わず聞き返してしまった。
「えっ?なんで?」
「こっちは毎年、男が女になる超常現象を見せられてるんだぞ。そのくらいの話すぐに飲み込める。むしろ、ああやっぱりなってう納得のほうが強いくらいだよ」
「そ、そうか……」
ほんの少しではあるが空気が朗らかになっていくのを感じる。最悪の事態は何とか回避できたと安堵したその時だった。
隆作の表情が一変する。それは獲物を狩る獣のような目つきで唇をぺろりと舐めている。
「それにしても、それが事実ならお前を天女様の子孫だって言ってた爺さんの話もあながち与太じゃなかったってことか。へえ、子供を産むために女にねえ」
「あ、ああ。だから、こういうことはもう止めて……」
「つまり葉月は俺の子供を産めるってことだよな?」
そしてそのまま僕のショートパンツに手をかけ一気に引きずり下ろい力任せに脱がせた。恐怖と驚きで僕は必死に暴れて畳の上を這うように逃げ出すも、足を掴まれ強引に布団の上に引きずり戻されてしまう。
「ははは、男モノのパンツ一枚の葉月もいいな。裸やバニーちゃんよりそそるぞ」
「やめろっ!離せこのっ…!ううっ…!」
必死の抵抗をねじ伏せるように、酒臭い息が顔にかかり再び濃厚な接吻をされてしまう。今度は先程よりも激しく口内を犯し尽くされるようなディープキスだった。
(な、なんだこれ……)
その瞬間、下腹部にじんわりとした生暖かい締付けのような感覚を覚えた。今まで感じたことのない感覚に戸惑いながらも必死に耐えようとする。しかし、そんな僕を嘲笑うかのように隆作は僕の胸を揉みしだき始めた。
「やっぱいい乳してるな。今日は女の悦びってやつをしっかり教え込んでやるからな」
「やだぁっ!そんなのいらな……ひあっ!」
乳首をつねり上げられただけで背筋を電流のような衝撃が走る。そのまま押し倒され仰向けの体勢にされたと思うと、覆いかぶさってきた隆作が僕の胸の頂を口に含まれたのだ。そのまま舌先で転がすように弄ばれ、時折強く吸い上げられる度に体がビクンと跳ね上がりそうになる。そしてもう片方の胸には右手が伸びてきて同じように愛撫され始めた。
最初はくすぐったいだけだったのだが次第に快感へと変わっていき、僕は無意識のうちに甘い吐息を漏らしてしまっていた。そんな僕の様子を隆作は見逃さなかったようだ。今度は先程よりも激しく責め立ててくるようになったのだ。
「もう許して……」
「前におっぱい吸わせてもらった時より随分敏感じゃないか。こんなに体をピクピクさせて」
「そ、そんなこと……ひあっ!」
否定しようとした瞬間、再び強く乳房を吸い上げられてしまい言葉にならない声を上げてしまう。その間も隆作の右手は休むことなく僕の胸を揉みしだいており、左手はトランクス越しに股間部分を撫で回している。その刺激だけでもどうにかなってしまいそうなほどなのに、さらに胸まで責められているのだからたまったものではない。
「やめろよっ…。こんなっ、こんないやらしいことっ……!」
必死になって手足を動かし、覆いかぶさり乳房にむしゃぶりつく隆作から逃れようとするもまるで上手くいかない。女になっても身長は僕のほうが高いが、それでも女の細身と体勢の不利、体に上手く力が入らないことも相まって隆作に良いように弄ばれてしまっている。
「ほらほらどうした葉月。もう終わりか?早く脱出しないとお母さんになっちゃいましよーっと」
「くっ……このっ!」
「おっと」
隆作は僕を挑発するように言うと、僕のトランクスを一気に引き下ろした。そして露になった秘部に無遠慮に手を突っ込んできた。その瞬間今までとは比べものにならないほどの快感が全身を駆け巡る。
「ひっ!?あああっ!!」
突然の強い刺激に思わず甲高い声を上げてしまう。そのせいで一瞬抵抗が弱まった隙を見逃さず隆作はさらに指の動きを激しくしてきた。最初は一本だけだった指が
「や、やめてっ!そこは駄目ぇ!」
「ふーん。葉月はここが一番感じるんだな」
隆作は意地の悪い笑みを浮かべると膣内に挿入された指をさらに激しく動かし始めた。同時にもう片方の手で僕の胸を揉みしだき始める。胸からの刺激だけでもどうにかなってしまいそうなのに、膣内まで責められてはもう限界だった。
「やっ!あっ!あああんっ!!」
今まで感じたことのないほどの快感が全身を襲う。目の前がチカチカする。
「やだっ!こんなの知らないっ!!助けてっ!!」
「ああ、もっと気持ちよくしてやるからな」
隆作はさらに指の動きを早めていく。その度に僕の頭の中で火花が散るような感覚に襲われる。もう何も考えられなかった。ただひたすらに喘ぐことしか出来ないでいる僕にとどめを刺すように隆作の舌が首筋を舐め上げた瞬間だった。下腹部の奥のほうから何か熱いものがこみ上げてくるのを感じたのだ。そしてそれが一気に弾けたと思った瞬間、僕は絶頂を迎えてしまっていた。それと同時に目の前が真っ白になり体がビクビクと痙攣したように震え、そのまま裸体を仰向けにしたまま呆然としていた。
「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」
「どうだ、いいもんだろ。女の快感ってもんも」
隆作はそう言って僕の頭を撫でると、そのまま唇を重ねてきた。もう僕にはそれを拒む余力は残っていなかった。
「んっ……ちゅぱっ……」
無抵抗の僕の口腔が一方的に蹂躙される。その刺激は敏感になった全身を強く刺激し意識をさらに白濁させていく。
龍作は僕の足を広げ、その間に割って入る。何をしようとしているのかは明白だった。
「それだけは…。や、やめて…」
「前に店で先生に接待した時から思ってたんだがな。葉月、男に弄ばれるの楽しんでるだろ」
「そ、そんなことっ……」
「あの時だって、お前がその気になれば俺や先生から逃げて店の外にでも逃げられたのにそうしなかった。ピンと来たよ。表面上はどう嫌がって見せても男に好きにされるのを受け入れてるってな」
「ちがっ……」
「違わないさ。だから葉月は女になるんだよ」
隆作はそう言って僕の両足をさらに大きく広げさせる。そしてそのまま覆い被さってきたかと思うと、一気に挿入してきたのだ。その瞬間、今までとは比べ物にならないほどの激痛が走る。しかしそれも一瞬のことだった。
「ああぁっ!痛いっ!」
「おお、やっぱり元男でも処女は痛いか?悪いな、でもすぐに気持ち良くなるから我慢してくれ」
「やだぁっ!抜いてぇっ!」
僕は必死に抵抗するものの隆作は全く意に介さない様子で抽送を繰り返してくる。その度に激痛が走り涙が出そうになるも、同時に下腹部からは今まで感じたことのない感覚が込み上げてきていた。最初は痛みしか感じなかったのだが次第にそれが快楽へと変わっていくのを感じる。
「やだっ……こんなのっ……」
「どうした葉月?随分女らしい声出してるじゃないか」
「そんなことっ……ないっ……!」
隆作の言葉に僕は必死に否定しようとするが、口から漏れる声は自分でも分かるくらいに甘く蕩けていた。それがさらに羞恥心を煽り立てる。そんな僕を見て隆作はニヤリと笑うと僕の体を更に早く往復し始めた。
「あっ!あんっ!」
「いいぞ葉月っ。こりゃ堪らん。こっちもそろそろ限界だ!」
「やっ!だめぇっ!」
隆作はラストスパートをかけるように激しく腰を打ち付けてくる。その度に僕の頭の中で火花が飛び散り、意識が飛びそうになるほどの快感に襲われていた。そして遂にその時が訪れたようだ。
「出すぞ葉月っ!」
その言葉と同時に膣内に熱いものが注ぎ込まれる感覚があった。それと同時に僕も再び絶頂を迎えてしまい全身を大きく痙攣させるかのように震わせたのだった。
「あ……あぁ……」
僕はぐったりとしたまま天井を眺めていた。もう何も考えられない遠のきつつある霞がかった意識の中で隆作の声が聞こえる。
「よかったぞ葉月。もしこれで万が一のことになっても責任は俺がきっちり取るからな」
以前、光の玉が現れた夢と同じような闇の情景が広がっている。これが夢だという自覚はあるが一向に目は覚めない。そんな時、声が響いた。
『葉月、礼を言わせてもらう。これでひとまず君は一つの役目を果たしたことになる』
「役目?」
『そうだ。君は我が末裔としての役目を果たした。後は、産むだけだ』
「産むって……。まさか……」
『君はこれから女として生きていくことになる。だが、案ずることはない。君と境遇の似た末裔も何度か見かけてきたが、皆立派に女性としての生を全うした』
その言葉にはっとする。そういえば僕の親戚に男の早死と入れ替わるかのように女性が現れ子供を成していたケースが散見していたのは…。
『そうだ。皆、男だった者が女になり母として生涯を歩んだのだ』
「そ、そんな…」
衝撃の事実を開示され呆然とする僕に光球の声が響く。
『ではさらばだ。これを最後の私は君から完全に消滅する。我が血に連なる命を一つでも多く産み落とさんことを祈る』
目覚めたときには朝だった。昨日の悪夢のような出来事は残念ながら現実だったようだ。その証拠に隆作がこれ以上ない程に満足そうな穏やかな表情で眠っている。それも、僕の大きな胸に顔を挟むようにしてだ。僕の体は例年とは違い15日を過ぎても男に戻らなかったのだ。そして、遅くとも来年には新たな家族が増えることも確信を持って予感していた。
それから丁度3年経った日の夜、僕はウエディングドレスを思わせるセクシーなランジェリー姿で隆作のバーで働いていた。
「おおっ。相変わらず葉月ちゃんはスタイルいいねー。二児の母とは思えないな」
「確かに、これが経産婦の体なんて信じられんないや」
「もうっ。あんまり見ないでくださいよっ」
そう言いつつ僕はカウンターで接客をしていた。来店した客は全員僕の体を嘗め回すように見つめてきたり、時には胸や尻を触ってくる者さえいる。そしてそんな客達に愛想を振りまきながらも充実した毎日を送っていた。
「これなら、これからも元気な赤ちゃん何人も産めそうだな。教え子ながらいい尻だ」
「ひゃあ!こら先生、あんまりそういうことしてると奥さんに言いつけますからね」
カウンター席に座っていた中山先生から尻を撫で回され、僕は思わず悲鳴を上げる。
「先生、俺の女房にそういうイタズラは控えてくださいね」
「ああすまない。あまりにヒップが見事だったんでつい…」
そんな先生を隆作が諌める。もう先生は僕が男だったことを覚えていない。不思議なことにあの夜以降、隆作以外の人間は僕がもともと女だったように錯覚しているらしく女として社会で暮らすことにそこまで障害は無かった。
「さ、今日も働くぞ。あの子を頑張って養わなきゃいけないからな」
店は連日僕目当ての男性客が足を運んで繁盛している。そんな客に何度も足を運んでもらいたくてたまにこういうスケベな格好で接待しているというわけだ。今だって頭は男の時とあまり変わらないから恥ずかしいけど、あの子達を育てるために少しでも店の売上を伸ばす必要があった。
最初は死を考えるほど苦しかった。あの日の一件で身籠った僕は毎日恐怖に怯えていた。このまま産んだら自分はどうなるのだろうか。このまま生きていけるのか、と。出産を終えた。でも、そんな不安や負の感情は生まれたこの顔を見て全て吹き飛んだ。この子を育てることこそが僕の使命であると魂が唸っていた。僕に酒の勢いであんな事をした隆作への怒りは確かにあるが、これまで育ててくれた恩やこの子を授かった喜びのせいか怒りはあまり感じなくなっていた。むしろ、もっと新たな命を腹を痛めて生みたいとすら思い始めていた。
あれから3年が経ち僕はもう25歳だ。隆作は毎晩僕を求め、そして、腹に種をばらまいてくる。また新しい家族が増えることになるだろう。今度は男の子だろうか?女の子だろうか?どちらにしてもきっと可愛い子に違いない。この感情も、あの宇宙人が自らの末裔を増やすのに都合がいいように僕に植え付けたものなのかもしれない。それでもいいと今は思えるようになった。今の僕は母なのだから。
初出20240629