650万ヒット記念作品 洗脳TS小説第165番 SAY YES

旧あむぁいおかし製作所のキリ番作品の一つでテキストは私、挿絵とキャラ絵はKAZU-Tさんです!初出は2008/04/25あたり。

「それじゃあ、これから質問をするから、必ず『はい』って答える事」
「はい」
私立東雲高校3年生、森村あゆむはボイスチャットにはまった。少し前の模試の判定がAで油断したのか、その日のあゆむは脇が甘かった。
ネットは1日1時間。そう決めていた。
便利なネットも過度に依存すれば害悪にしかならない。
受験生には節制が必要なのだ。
切っ掛けは、彼女の。高瀬ゆかりのブログの記事だった。
知性と教養溢れる品格のある文章。論理展開も完璧で心地よい。
ところがそれを書いてるのが20そこそこの東大生でしかも可愛いと言うのが意表をついた。で、書き込んだ。
何度か、交流を続けるうちにすっかり嵌ってしまっていた。
東大の情報を得るため、などと自分に言い聞かせて毎日チェックするようになった。
いや、さすがに東大は無謀だったのだが。
で、ボイスチャットに誘われたのだった。
両親が用意した完璧な防音のある勉強部屋は内側から鍵をかければ密室と化す。
彼女の言うがままに携帯とPCをつなぎ、アドレスをクリックするとそこには彼女が映っていた。
カメラ越しに動く彼女はブログで見慣れた彼女よりもさらに魅力的で。自分だけが今、彼女を独占している事に有頂天になった。彼女の映る画面、その背景は、プライバシー保護とかなんとかで不思議なゆらめきのある、色彩が時事変化するものだった。
じっと見ていると引き込まれそうな、ずっと見ていても飽きないような不思議なCGアニメ。これには実は仕掛けがあるのだが、あゆむが気づくのはしばらく後のことだ。
心理学、に興味があるそうだ。
あゆむも興味がある気がした。
受験生の心理状態に興味があるそうだ。
なるほど、と思った。
彼女は心理学のレポートを書かねばならず、協力して欲しいとの事だった。
もちろん、協力することにした。
で、冒頭のセリフとなる。
あゆむはこれからの彼女の質問にすべて「はい」と答える。そういう約束をした。
さて、では冒頭からの続きを始めよう。おっと、その前に少しだけ種明かし。
このお話、タイトルはSAY YESと言う。
奇抜な設定で大変申し訳無いが、このお話、主人公のセリフは実は「はい」しかない。
で、物は相談だが、キミに主人公のセリフをやってもらおうと思う。
良いじゃないか。物語と言うのは作者と読者が共同で作り出していくものなんだ。
良いだろ。簡単さ。
これから、主人公のセリフがあるたびに
「  」
とだけ書いておく。そこは、「はい」と言う意味だから、キミはそれを「はい」と読んでくれ。今、誰かまわりにいるかな。いないなら、好都合。そこだけ、声を出して読んでくれ。まわりにいるキミは、ちょっと残念だね。そういう場合は、心の中で「はい」と読むんだ。
大丈夫。「  」と見ただけで、「はい」と見えるようになっちゃうからね。
じゃあ、お待たせしたけど、お話を進めよう。
「今、緊張してる?」
「  」

「ダメよ、緊張したら。リラックスして」
「  」

少し、頬が緩む。ふたりっきりの会話。
「あゆむくん、って呼んでいいわね」
「  」

「わたしの事は、ゆかりさんって呼んでね」
「  」

女の子を名前で呼ぶなんてずいぶん久しぶりだった。
「あゆむくん」
「  」

「ふふっ。ドキドキしてるの?」
「  」

悪戯っぽく、彼女は笑う。
「女の子とこんな事するの、ひょっとして初めて?」
「  」

「やっぱりね。そうだと思った。あのね、これは実験なんだ。心理学のね。どんな実験だか知りたいかな?」
「  」

「フット・イン・ザ・ドア・テクニックって言うの。セールスマンがドアの隙間に足をいれて閉められないようにするやつ。そこまでいけば、半ば売ったも同然なんだ。人間ってのはね、小さな頼みごとを聞いているうちにだんだんと断れない心理状態になっていくんだって。だから、今。あゆむくんもわたしの頼みを断れない状態になってきてるわけ」
「  」

でも、ネタバレしちゃったら効果が無いんじゃないか?
「ねぇ、キスして?って、言われたらキスしちゃうでしょ?」
「  」

キミは赤面する。しかし、それは心理学と言うより、恋かはたまた本能の話じゃないの?
と言うか、「はい」って言えって言ったくせに。
「ふふ。ほらね。キミってほんとはわたしの事好きなんでしょ?」
「  」

上擦った声が、本音を透かす。
キミは彼女に恋してる。恋の魔法に掛けられた。
「思わぬところで告白させられちゃったね。でも、いいじゃない。うじうじ悩んでたら受験に悪影響だしね。わたしに感謝しなさいね」
「  」

「そうそう。それでいいのよ。感謝ついでにもう少し実験を続けること。いいわね?」
「  」
断れなかった。キミは彼女が好きで、彼女に告白した。彼女の返事は、まだもらっていない。

知らず知らずのうちに。キミは深みに嵌っていく。
これは、従順さを高める心理操作。
はい、と言う返事をするルール。それは一見、拘束に見える。
しかし逆だ。実はそれは解放なのだ。本心を言っても良いと言う許可なんだ。
そう、もともとキミは従順だ。勉強も、生活も、そりゃあストレスが溜まるだろう。成績を維持するのだって大変なんじゃないか?
従順だからやっていける。
本音を押し殺しても。
しかし、殺したはずの本音や本心はもちろん死んではいない。ただ、心の奥底で、おとなしくしていただけ。
キミのプライドの高さが作った虚栄や見栄。傷つき易い心を守るさまざまな壁。
ほんとうは窮屈な衣を脱ぎ捨てたかった。
そうでしょ?
好きだって言いたかった。
もっと素直に。
好きだと言って欲しかった。
優しく包んで欲しかった。
そうだよね?
でも、怖かった。傷つくのが。拒絶されるのが。

でも、ほら。全ての質問に「はい」と答えるルールがキミを守ってくれるよ。
本音を言っても良いんだ。
怖がらなくても良いんだ。
だって、ただの心理実験のルールだから。
さあ、好きだと言って。好きだと言ってあげるから。
「では引き続き、質問をするから、必ず『はい』って答える事。それがキミの本心であっても、そうでなくても。全部の質問にちゃんと『はい』って答えられたら、ご褒美をあげるからね。ご褒美、欲しいでしょ?」
「  」

「そうそう。その調子。キミはわたしをおかずにオナニーした事はある?」
……
「  」

「ふふ。間が空いちゃったね。いいけど、その方がわかっちゃうんだけどな。本当か、どうか。あら、怒ってるの?拗ねてるの?だめよ。わたしはオトナだし、キミだってオトナでしょ?」
「  」

「なら問題ないじゃない。それにこれは心理学の実験。でもね、この実験をすると二人の距離は縮まるの。ココロの距離がね。ほら、確かに実験前とではちがってるでしょ?」
「  」

「前より、わたしの事が好きになった?」
「  」
心理操作の訓練を受けたものが、そうでないものを操ることなんか簡単だ。
そうでなくても男は本能的に可愛い女の子の頼みを断れないんだ。
巧みに混ぜられた言葉の縄がキミを縛っていく。
でもキミはそれに未だ気付かない。
彼女、キミの呼吸に合わせてるぜ?
吸って吐く。人間なら当然呼吸してる。
吸い込むときに言葉を投げかけられたら、その言葉を丸呑みしてしまう。本当さ。
催眠術師はそうやって、暗示を入れてしまう。
もちろん、キミはそれにも気づけないけれど。
心理操作は「命令」「受容」「報奨」の3つのプロセスからなっている。
彼女は拒絶される命令を出すようなへまはしない。
操作対象、キミの事だよ?キミが断る理由の無い。断るはずの無い。いや従いたくてたまらない命令しかしてこないよ。
だから、自然に、当然にキミは従ってしまう。
彼女の「命令」を「受容」してしまう。
そうする事が当然になっていく。
キミが「受容」すると、彼女は「報奨」を出してくれる。
それはほんの僅かな笑みであったり、優しい言葉であったり。
キミはそれが嬉しくて。
もっと欲しくて。
ますます深みに嵌ってしまうよ。
好きな女の子のために頑張るのは男の子のサガでしょ?
そうやって、「命令」「受容」「報奨」のサイクルを何度も何度も回していくと。いつの間にか脳の思考回路に刻み込まれていくよ。
所詮、人間の思考回路だって化学反応なんだ。
同じところを何度もなぞれば、そこはやがて深い溝になる。
シナプスが結合して回路が固定化される。
そして、消せなくなってしまう。
ほら、だんだん難しい「命令」も「受容」できるようになってきた。
キミが難しい「命令」を「受容」すれば、大きな「報奨」がもらえるでしょ?

「わたしと付き合う事になったら浮気はしない?」
「  」

「ふふ。約束だよ?」
「  」
ほらね。約束しちゃったよ。
これはダブルバインドと言う心理テクニック。「浮気をするかどうか」を検討する時点ですでにキミと彼女が付き合ってる、愛し合っていると言う前提条件になってしまっている。そう、キミは無意識のうちにこの前提条件を刷り込まれてしまっている。
だんだん、ルールとして「はい」って言ってるのか、キミの本心で「はい」って言ってるのか。わかんなくなってきただろ?
ううん。キミは本心で「はい」って言ってるのさ。
そうでしょ?

「じゃあ、ご褒美をあげよっか」
「  」

ほらね。餌を目の前に出されたら、キミはもう餌に夢中だろ。
お預けを食らってる犬みたいだぜ。行儀良く、「良し!」を待ってるけど、餌からは目が離せないんだ。
「じゃあ、目をつぶってね」
「  」

言いなりだね。
しゅるしゅると言う衣擦れの音がキミを更に興奮させる。
ほんとによだれを垂らした犬みたいだね。
まぬけな顔をさらしちゃってさ。
「じゃあ、目を開けて」
「  」

期待に目を見開いたキミがディスプレイ越しに見たものは。
強烈な光の明滅。
揺らめく画面の彼女の微笑みを見ているうちにキミの頭はぐらぐらと揺れ始める。
「さあ、もっと良く見て。そして、全てを受け入れるの」
「  」

そしてキミは画面を見続ける。
高速で映し出される画像とメッセージがキミを縛っていく。
そう、これは新たな「命令」。
キミはこれを「受容」しなければならない。
準備はいいね?
大丈夫、素敵な「報奨」がキミを待っているはずさ。

「  」
「  」
「  」
「  」
「  」
「  」
密室の中、ひたすら画面を見つめて、キミはひとり返事をする。何度も、何度も。

目が覚めたキミの頭はすっきりと冴えていた。
やらなければならない事を反芻し、キミは行動を開始する。
痕跡を消すために、PCと携帯を操作してDLされたプログラムを実行する。
そして、両親の為に書置きをする。今までお世話になったお礼を言っておかないとね。
てきぱきと準備をし、いつものようにさりげなく家を出る。
指定された場所に行く為に。

「よく来たね」
「  」
指示どおり、誰にも気付かれずに到着したキミを彼女は出迎えてくれた。彼女の顔を見ると自然に涙が溢れた。もう離れたくないと思った。
彼女以外にも大勢の白衣のスタッフがいた。まるで、病院か研究所のように思えた。ふたりっきりじゃないことがちょっと悲しかった。
「じゃあ、さっそくだけどこれを飲みなさい」
「  」
渡されたコップに入った透明の液体を一気に飲んだ。炭酸水のような味がした。
「お腹が痛くなったらトイレに行ってね。下剤だから」
「  」
どうして下剤なんか飲むんだろうと思うキミの疑問に彼女はすぐに答えてくれた。
「今度は、別の実験をするんで協力して欲しいんだ。いいよね?」
「  」
「よかった。ありがと」
ぎゅっと抱きしめられ、天にも昇る気持ちになった。
「ねぇ、抜いて欲しい?」
「  」
その上、彼女は抜いてくれると言う。不自然なような気もしたがもちろん、キミに否応はない。だって、彼女が好きだから。彼女もキミを好きなはずだから。
ああ、そうだね。何に使われるのかを知っていたら、ひょっとしたら……あはは。今更そんな仮定にはなんの意味もない、か。
「じゃあ、裸になりなさい」
「  」
抜いてくれると言う言葉に魅了されたキミはそそくさと衣服を脱ぎ始める。みんなが見ているのにね。そして、即座に反応するペニス。
そうだね。これが「報奨」だ。ご褒美を受け取りなさい。
これが、人の手で出させてもらえる最初で最後の機会なのだから。
彼女は薄いゴム手袋を手に嵌めると優しくキミの局部を弄り始める。
ところが、キミはあっと言う間に果ててしまう。
「あらら」
恥辱と後悔がキミを襲う。
しょうがないな。最後なんだぞ?
彼女はにこやかに放たれた精液を丁寧にこそぎ、シャーレに集める。
「うーん。じゃあ、可哀想だからもう一回。してあげよっか」
「  」
興奮しつつ頷くキミ。
良かったね。彼女の機嫌が良くて。
こってりと、じっくりと。今度はかなり長く楽しめた。
自分でやるのとは全然違う。
彼女の愛撫に身を任せ、耐えるのはたまらない快感だった。
ぞくぞくと背筋に快感が走る。
そして、耐えに耐えたあと、盛大に、果てた。
「気持ちよかった?」
「  」
息があがるキミ。あーあ。ご覧、彼女を。またキミの精液をシャーレに集めてるぜ?
「そう。男の快感、覚えておけると良いね」
「  」
意味深なセリフにも靄のかかったキミの頭にはピンと来ない。
彼女はシャーレを後ろの研究員に渡すと、手袋をはずす。そして、立ち上がって言った。
「じゃあ、検査をはじめるね。分かってると思うけど、みんなキミの為にわざわざ集まってくれたんだからきちんと協力する事」
「  」

それから、キミは白いガウンを着せられた。着てきた服は処分された。
彼女と研究員達はキミにいくつかの検査をした。
その間にトイレに行きたくなったのでトイレに行った。
トイレに行った後はシャワーを浴びた。すみずみまで入念に洗うように指示されて、キミはそれに従った。
そして、全ての準備が終わった。

「つらくて、苦しいかもしれないけど。わたしを思い出して我慢してね」
「  」
彼女のためなら頑張れると思った。
薄い、青みが掛かった液体に満たされたカプセル。さまざまな電子部品やメーターが付いており、コードで外部端末と接続されている。そこに、キミはこれから入るのだ。
キミはカプセルの中の液体に足をつける。生ぬるく、足に絡みつく液体。ねっとりと粘度が高い。キミは腰を落し、足を先まで伸ばす。カプセルは人一人が横になるのに十分なスペースがあった。
「寝そべって。液の中に顔を漬けても大丈夫だから。酸素がたくさん入ってるからね」
「  」
少しだけ、躊躇したが彼女の「命令」だ。「命令」は「受容」しなければならない。それが、「褒章」をもらう為のルール。キミは思い切ってカプセルの中で寝転ぶ。薄青い液が視界を覆う。無数の小さな泡が水面へと向かう。ゆっくりと、息を吐き出す。ごぼごぼと泡が出る。おそるおそる水を吸い込む。肺から空気が抜け、かわりに液体で満たされていく。少し、息苦しかったし、なんだか気持ち悪かったが確かに彼女の言うように息はできるようだった。何度か息をするとなれてきて何も感じなくなった。
「聞こえる?」
「  」
耳元で彼女の声が聞こえる。そう、水は音の媒体だ。機械を通じて彼女の言葉を聴くことができる。キミは返事をするが、はっきりと彼女に聞こえるか、どうか。
あはは。心配要らないって。
キミの返事なんか彼女には分かっているんだから。
「閉めるね」
「  」
自動的にカプセルの蓋が閉まっていく。
勿論、中からは開けられないようにできている。さっきよりちょっと暗くなった。少しだけ、不安になる。大丈夫、彼女が付いている。そう思った。液体が充足されて空気と置換されていく。泡が少なくなってきたのは内部を循環させてろ過しているからだろう。
キミは大人しく彼女の言葉を待つ。
液の温度はキミの体温と等しい温度を保つように設定されている。しばらくするとキミと液体の境目があいまいになってくる。どこからどこまでがキミのカラダで、どこからが薄青い奇妙な液体なのかが。
自分が、ぼんやりと、ぼやけていくような感覚。
「動かないで。固定するから」
「  」
足の踵、太もも、腰、両腕、首が固定される。キミは自由に動けなくなった。
「点滴を打つね」
「  」
右の腕と首筋。二箇所にずぶりと針が挿入される。痛みと異物感。だが、そんなものはまだまだ序の口だ。我慢してもらわなくっちゃ。
だって、キミはこれから二週間。そこから栄養を取るのだから。
ブドウ糖に塩化カリウム。細胞変換促進薬、筋肉弛緩剤、さまざまな成分がキミを内側から変える。中でもハイブリッドDNAは特注品だ。キミの遺伝子を元に作られて、なんとキミを女の子に遺伝子レベルで書き換えてしまうのさ。
ああ、もちろんそんなものを注射されてるなんてキミは夢にも思わない。
どうやって作ったかって?
ほら、キミ。さっき彼女に抜いてもらっただろ。気持ちよかったの、覚えてるだろ。
あれを元にして作ったのさ。なんせ精液は遺伝子情報の塊だからね。ちょちょいと書き換えてやれば、キミの。女の子のキミの遺伝子情報を持ったハイブリッドDNAの完成だ。一種のウィルスのようなものだけど、タチが悪いことにキミ自身の遺伝子をもとにしてるからさ。キミもキミのカラダもこれが異物だって認識できないってわけ。
おっと、もちろんキミのカラダが漬かっている薄青い液体もただの色水なんかじゃないぞ。その液体はたんぱく質分解酵素が入っていてキミを溶かしてしまうのさ。大丈夫死にゃあしないよ。痛かったり苦しかったりするだけだ。それになんでもかんでも溶かすわけでもない。紫外線と超音波で活性化させなければ無害なんだ。それどころか成長ホルモンも入っているから傷口なんか逆にすぐ治っちゃう。だから、彼女はカプセルを操作して、キミのカラダの不要な部分だけ溶かしてしまったり、逆に必要な器官を成長させる事ができるのさ。
動けなくって、薄暗い中、キミはなんだか眠くなってくる。
でもね、寝させないよ。やらなければ行けない事があるんだ。キミの彼女への愛をより確かなものにしないとね。何があっても絶対に裏切らないように。裏切れないように。
「ねえ、わたしの事好き?」
「  」
「ふふ。わたしもよ。わたしとあえて良かった?」
「  」

ほら、始まった。
話術とちょっとしたプログラムだけで簡単に操られてしまったキミだもの。完全に手の内にある今やもう完全に手遅れさ。カプセルの中では脳内の化学反応を正確にモニターできる。「命令」「受容」「報奨」に関する全てのキミの反応。刺激とその反応を何通りも、何百通りもデータを取っていく。そうするとキミの脳のメカニズムが把握できるのさ。メカニズムがわかればどうすれば、脳のどこでどんな化学反応が起これば、キミが「受容」するのか、「報奨」を感じるのかが分かるんだ。そう言った情報は全てコンピューターに蓄積されて、制御ユニットに書き込まれていく。キミの制御ユニットにね。
抵抗しようにも、外からの刺激を一切遮断されたカプセルの中で、ハイテクと心理学に長けた彼女の心理操作に抵抗しようなんて、キミじゃなくても出来ない相談。
だから、諦めるんだね。
さっそく、手術を始めよう。
レーザーメスが一閃し、キミのおへその下あたり、約3cmが切り開かれる。痛みにびくんとしたキミはしかし動けないからどうにもならない。ほら、固定されてて良かっただろ。
「ちょっとお腹を開いたんだ。痛い?」
「  」
まぁ、痛いだろうね。大丈夫、死にゃあしないから。心配そうにキミを覗き込む彼女。弱弱しく微笑むキミ。そうそう、彼女が見ていてくれる。
お腹を切ったのは勿論理由がある。子宮核を埋め込むためさ。子宮は精巧で精密な器官だ。だから、そう簡単に作れたりはしない。生命の力を、キミの力を利用しないとね。
とりあえず、もう要らない精嚢は除去してしまおう。子宮と相反するからね。マニュピレータが器用に動くと無痛のままキミの精嚢は切り取られて吸いだされる。キミ自身が気付かない間にキミの精嚢は機能を停止し、除去されてしまった。
そして代わりに直径7mm長さ僅か25mmの子宮核がお腹に埋め込まれる。
埋め込んだ後は縫合だ。大丈夫、キミの漬かっている液体は紫外線と超音波さえなければ細胞を活性化させ、賦活させる。だから、すぐに傷なんてふさがってしまう。無菌だからなんの心配も無いって。
子宮核はこれからキミを女の子に改造するにあたり、内部から改造する役割の司令塔だ。キミのカラダの変化を調査、分析し、カプセルに送る。そして、ハイブリッドDNAのデータに基づき周辺の肉を改変してキミ自身の子宮を形成していくんだ。ゆっくりだけど、確実に。後戻り無しにね。
一番難しい手術が完了したから、彼女もほっと一安心さ。あとはじっくり調理すればいいだけ。想いのままにね。
「ねえ、わたしの事好き?」
「  」
何度も繰り返した質問。キミは律儀に返事する。その反応が、読み取られて制御ユニットに蓄積されていく。キミはもちろん知らないけれども、もうカプセルをちょっといじれば自由にキミに恋させる事ができるのさ。誰にたいしても、ね。
「わたしもキミの事、好きだけど。でも、やっぱり男の子よりも女の子の方が好きなの。ねぇ、女の子になって?」
「  」
その言葉はキミの意志だったのか。それとも単なる脊髄反射だったのか。あるいは、制御ユニットに言わされたのか。あははは、愛、なのかも。
でもそんなことはもう分からないし、無意味だ。
兎に角、キミは女の子になると彼女に約束した。
大好きな彼女に。
約束は、守らなきゃね。

先ずは不要な部分を除去するんだ。紫外線と超音波を当ててね。
無痛で処理することもできるんだけど、でも、ごめんね。ここは痛くやる事になってるんだ。もちろん、理由があっての事さ。
一つ、苦痛を与えられたときのキミの脳の反応のデータが欲しいから。これがあればいつでも制御ユニットを通じてキミに苦痛を与えられるじゃない。ああ、心配しなくても使う機会なんてないと思うよ。馬鹿だな、キミが逆らったり馬鹿なことをしない限り、こんな機能を使う必要ないじゃないか。
二つ、苦痛を与えられたときに出る脳内麻薬、エンドルフィンやドーパミンが出たときのデータが欲しいから。これがあれば、いつでもキミに快楽を与えられるだろ?楽しみにしておいて。そう考えたら、今はつらいけどやらなきゃいけないって事がわかるだろ?
三つ、支払ったコストが高い方が得たものに対する満足度が高いから。
これからキミは女の子になるんだ。可愛い、素直な女の子にね。でも、ま。今まで男だったわけじゃない。いろいろあって、元に戻りたいと思うときが来ないとも限らない。そんな時に「女の子になるに際して苦労したり痛かったり」すればするほど「代償を払えば払うほど」、女の子になった喜びを感じるものなんだってさ。
あはは、高い金を寄付した信者は宗教団体をなかなか抜け出せないって?ま、当たらずといえども遠からずかな。
まぁ、そんな訳でキミは生まれ変わるに際して痛みと、苦しみを……おい、気絶している場合か。覚醒処理実行。まったく、ちゃんと耐えなきゃ終わったときの爽快感や開放感が味わえないぞ。大丈夫だよ、分解はほんの96時間なんだから。
ああ、でも痛そうだね。
じゃあ、易受容化プログラムを実行してあげよう。彼女の命令を受容するたびに放出するアドレナリンの量を少し増やしてあげる。そうすれば、受容と快楽が一体化して、キミの心理操作がはかどるし、キミも痛みが和らいで一石二鳥だろ?
「がんばって、もう少しよ」
「  」
そうそう。その調子。まだ先は長いけど。彼女はとっくに合成音声に切り替えてモニターをながめてコーヒータイムだけれども、勿論そんな事、キミは気づかないよね。

やあ、おめでとう。よく頑張ったね。分解は終わりだ。お疲れ様。ご覧、かってキミを男にしていたモノは最早無い。男である理由も、根拠も、一切なくなった。キミは完全に性別から解放されたのさ。男でも女でもない存在。なんて不安定な。
大丈夫、ちゃんと女の子にしてあげるから。
分解処理が終わる頃には子宮核が進める内部からのキミの改造もかなり進んでいる。ほら、子宮がもうすぐ形成されるぜ。卵巣、スキーン腺、バルトリン腺。いろいろなものが必要さ。これからはじっくり、ゆっくり、内部を改造する時間。ありあわせの材料を使って、子宮核の指揮下、ハイブリッドDNAを設計図に成長ホルモンの力で女の子になる為の器官を作り上げていく。それはじんわりとした快感。
そして、合わせて外部の改造も始める。
おっと、その前に。キミの制御ユニットを取り付けないとね。ほんの小さなものだけど、キミの脳の反応をすべて記録したものだ。これを脊髄を切り開いて埋め込んでしまう。擬似たんぱく質でできているからすぐにキミの自前の回路と癒着してどこからどこまでが本来のキミのもので、どこからが埋め込まれたものかはすぐに分からなくなってしまうよ。キミがカプセルを出る頃にはね。
それに、取り出せなくなる。
あはは。良いんだよ。取り出さないんだから。取り出す必要なんかないだろ。
ふふ、これが終わったら体の固定はとりあえず解いてあげるよ。その方が自然な感じで変われるからね。

さあお待たせ。いよいよ、とびきり美しく、生まれ変わるんだ。胸も大きくしてあげる。
ほら、気持ちいいだろ。カラダを変えられていくのは。快楽をカラダに、魂に刻み込んであげるよ。二度と忘れられないように。
「どうせなら、可愛い女の子になりたいよね」
「  」
「大きなおっぱいも良いよね」
「  」
「可愛い女の子になったら、男の子がほっとかないかもね」
「  」
幸せそうに笑顔を浮かべるキミ。
魅力的な女の子になると言うメッセージを「受容」するたびに。
少しずつ魅力的になっていく。
そう、優しさと愛をたっぷりと注ぎ込まれて、キミは美しく魅力的な女の子に変えられて行く。それがキミの受けるべき「褒賞」。
カプセルの中で、さらに240時間。
数え切れないメッセージが。心に脳に静かに降り積もっていく。

完成だ。
カプセルのドアが開き、液体が排出される。
ゆっくりと目を開けるキミの瞳にまぶしい光とともに愛する彼女の姿が映る。
「さあ、立ちなさい」
「  」
ゆっくりと立ち上がるキミ。よろけないように支える彼女。
「最高の気分でしょ?」
「  」
ささやく彼女の声にキミは最高の笑顔で答える。
「生まれ変わったあなたに新しい名前をあげる。これから、あなたの名前はユウ。良いわね」
「  」
ユウ……キミは新たな名前をかみしめる。
「もう、前の名前なんか思い出す必要なんかないからね」
「  」
言われて気が付く。キミは自分の前の名前を思い出せない。今の名前はユウ。前は、前はなんだったろう。ずっと使っていた名前なのに思い出せない事に一瞬不安になるけど、でも、ゆかりさんが必要ないと言うんだから必要ないのかもしれない。
ゆかりさん……
キミは彼女のそばにいるだけでドキドキしてくるし、顔がほてってくる。
彼女さえいれば幸せ。そんな気持ちがとめどなく湧いてくる。
キミの身体を白いタオルがぬぐう。白衣の男女がキミの身体と髪を濡らす液体をふき取り乾かしていく。キミはくすぐったくって身をよじる。生まれ変わった身体は赤ちゃんのように敏感だ。赤ちゃん?そんな大きな胸なのに?母乳だって出せそうだぜ?
そう、キミはいまや完全な女の子になっていた。
触覚と視覚がキミにそれを訴える。
そうだった。彼女に女の子になるって約束したんだった。
ほんとに女の子になっちゃうなんて……
大変な事を約束してしまった。
そう、キミの男のシンボルはもうどこにもない。
代わりにあるのは可愛いクリと綺麗なスリットだけ。
取り返しのつかない事をしてしまった。
なんでぼくは女の子になっちゃってるんだ!?
しかも、裸で、こんな……
不意に不安と恥ずかしさがこみあげてくる。
ゆかりさんはともかく、ほかの人にまで裸を見られるなんて。
でも。
まだキミは彼女から「はい」以外の言葉をしゃべっていいとは言われてない。
だから、キミは我慢しなくちゃいけないんだ。
どんなに恥ずかしくってもね。
「あなた、ほんとに可愛くなったわよ。ほら、ご覧なさい」
「  」

手鏡を渡される。そこに写っているのは可愛い女の子。そう、キミだ。
キミは自分に見惚れてしまう。
「こんなに可愛くなれてよかったね」
「  」
「こんなに可愛いんだから男の子がほっとかないわよ」
「  」
「キミが男の子だったとき、こんな可愛い子がいたらきっと好きになってたよね」
「  」
「わたしより、可愛いって思ってるでしょ」
「  」
「あら、やっぱり。でも、キミは女の子になったばかり。これからいろいろ教えてもらわないといけないわね」
「  」
「じゃあ、わたしがいろいろ教えてあげるから、キミは素直にそれに従うこと」
「  」
「ユウは男の人とキスとかHとかしたことなかったよね?」
「  」
「でも、女の子になっちゃったからそういう事もあるかもね?」
「  」
「ユウは男の子だったからそんなの嫌だよね?」
「  」
「でも、もう女の子なんだから我慢しないとダメかもね?」
「  」
キミはぐちゃぐちゃになってきた。「はい」と答えるたびにキミの感情は大きく振れ動く。「女の子になりたくない」という気持ちと「女の子になってよかった」という気持ち。「男になんかやられたくない」と言う気持ちと、「男とやらなければならない」と言う気持ち。彼女の言葉に簡単に感情が左右される。まるで往復びんただね。
そして感情が揺さぶられれば、揺さぶられるほど、キミはますます彼女から離れられなくなる。
女の子になりたいなんて思った事なんかなかった。
でも、女の子になるって言ってしまった。
女の子になんてなりたくなかった。
でも、女の子になってしまった。されてしまった。
女の子になんてなりたくなかった。
でも、すごく可愛くなってしまった。
男に、やられるのなんて嫌。絶対嫌。
でも、自分は女の子で。
女の子は男とやるもので。
だから、キミは男とやる必要があって。
でも嫌。絶対に嫌。
でも、自分は女の子で。
大きくて可愛いおっぱいがあって。
大きくて可愛いおっぱいは男に弄られて吸われるものだから。
だから、キミの大きくて可愛いおっぱいは男に弄られて吸われる運命にあって。
考えるだけで気持ち悪くって。
でも、女の子はおっぱいを吸われると気持ちよくなっちゃうし。
キミは女の子だから。
キミはおっぱいを男に弄られたり吸われると気持ち良くなっちゃうに決まってるんだ。
それにキミは女の子で。
もちろん、股間にはヴァギナがあって。
ヴァギナは男のアレを入れるためにあるのだから。
キミはヴァギナに男のアレを受け入れなければならないんだ。
でも。そんなの、絶対に、嫌……
嫌だけど。
嫌なのに。
受け入れてしまう予感がしていた。
だって、キミは女の子だもの。
「ほら。こんなに大きな胸。完全に女の子だよね?」
「  」
後ろに回った彼女がキミの胸を持ち上げる。その感触、その重み。すべてがキミが女の子だって囁いてくる。
「ほら。ここも。こんなに女の子だよ?」
「  」

彼女の指がゆっくりと下へと伸びる。そして、キミの股間に分け入る。かってキミが男だった事を証明するものは何もない。まるで最初から女の子だったかのように、それは存在していた。きゅっと親指でクリを押さえられてキミはびくんと震える。細い指がクレバスに侵入してくる。
「声を出さずにいたら、ご褒美をあげるよ」
「  」
甘美な誘いにキミは上擦った返事をする。
未知の快楽がキミを襲い、キミは身をよじってそれに耐える。体の奥から。キミの身体の奥から沸き立つように愛液が染み出してくる。
「気持ちいいんでしょ?」
「  」
そんな声出しちゃうくらい気持ちいいんだね。まぁ、しょうがないよね。愛するゆかりさんに愛されているんだから。彼女、テクニシャンだしね。
「もっとして欲しい?」
「  」
「ここも気持ちいいでしょ?」
「  」
「あなたはわたしのものよ?」
「  」
ひときわ高い愉悦がわきおこる。息があがり、もう彼女のことしか考えられない。
!!
不意に頂点に達した。これがイくって事?
キミはそう理解した。
「ふふっ。イっちゃったね」
「  」
なんとか、答える。虚脱感が全身をおそう。彼女に身を任せて、しばし息を整える。
「もう、離れられないでしょ?」
「  」
それは、本心。
キミはもう彼女以外のすべてを捨ててしまったのだから。
彼女に振り向かされて見つめあう。
目を見て、問われた。
「わたしの言うことはなんでも聞けるよね?」
「  」
しっかりと答える。
そう、彼女はキミのすべて。
「いい返事」
抱き寄せられてキスされた。
彼女と、はじめてのキス。
「これから、あなたはわたしといっしょにご主人さまの為に働くの」
「  」
ご主人さまって?
「ご主人さまは、あなただけじゃなくって、わたしのご主人さまでもあり、ここのみんなのご主人さまなの。だから、逆らっちゃダメよ」
「  」
彼女にご主人さまがいたなんて!
しかも、ご主人さまはキミのご主人さまでもあるんだ!
「来なさい。ご主人さまに紹介してあげるわ。そしてここでのキミの仕事と役割。ご主人さまへの接し方、いろいろ教えてあげる。わたしに恥をかかせないでね」
「  」
ご主人さまって、どんな人なんだ?キミの心に当然の疑問がわく。
しかし、キミは彼女の質問に「はい」と答える以外の言葉は許されていない。
そして、裸のままで彼女のあとをついていく。
どんな仕事をするのかな。裸のままで、ご主人さまに失礼にならないかな、なんて考えながら。

<おしまい>

投稿者 amulai002

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