投稿小説りばいばる ジェラルド三姉妹の狂愛 ~ナタリアの誘惑~ 

2025年9月12日小説

2011年3月ごろの作品です♪

作.黒い枕
キャラ&挿絵.うつき滄人

(1)

『――ねぇ、起きて……起きてよ竜也。 もうリュウヤったらっ……』

無粋な声の侵入で唯川 竜也の夢は掻き消された。
とてもいい夢を見ていた。
初恋の相手や、その妹たちと仲良く過すというもので、健全な男性なら自然と色夢に変わるように彼の夢も、そのような展開に縺れ込んでいく――はずだった。
長女のグラマーなスタイルと濃厚な女の風味。
次女の肉体のライン。
特に意外に大きい乳房と、くびれ折れそうな手足。
三女にいたっては、そういう女性的な魅力はまだないにせよ、その未成熟特有の可能性。
その全てが、手に入るはずの夢。
それが彼女たちと同じくらい、刺激的な声に掻き消されたのだ。
せめて、夢の中だけでも『男』として三姉妹と色欲を帯びたセックスをしたかっただけに、竜也の怒りは計り知れない。
だが――目覚めた瞬間、彼の顔は怒りでなく驚愕に歪んだ。

「ほらっ!日本人は早寝、早起きが基本でしょ」
「……んん…なんっ!!……おわぁッ!? ……ちょ、ちょっと待てぇ!!」

視界に美女を収めた瞬間、ホット・コーヒーを飲まされたみたいに意識が覚醒した。
そして唯川 竜也の脳内に、寝起きの頭痛とは違う危機感が響き渡る。
見れば、ベッドの両脇にある電気スタンドが付けられていた。
電球の全力ではない淡い光が、中途半端に部屋を照らしている。
そんな中でも――いや。
小さくて、頼りない光だからこそ、自分の体にのしかかっていた人物は妖艶に美しかった。

(な、なっ、なぁっ、なんでっ!? ナタリアがぁッ………!?)

過去に見たアダルト映像よりも、淫靡で、淫猥で、美しい女神――ナタリア・ジェラルドが目のやり場がない姿で、恥らうどころか、獲物を捕らえるように手と足で自分を捕捉していた。
嫌な感じが、火山の噴火のように爆発する。
心が、かき乱された。
夢と同じように彼女も、竜也自身を望んでいる。が、違う。
完璧に、徹底的に。
彼女が望んでいるのは、『唯川 竜也』の肉体なのだ。
我がことなのに、どこか他人事みたいに感じてしまう竜也。
これも、非日常――による影響なのか。

「もう…そんな大声上げないの。妹たちに迷惑でしょうが」

薄暗くても、美女だと把握できてしまうほどの端麗な顔と、女らしい肉付き。
つい先ほどまで幻想で楽しんでいた相手。
そして、同時に自分の同居人の一人であるジェラルド三姉妹の長女――ナタリアは、さも異変などないように彼に妖しい笑みを投げつけるが――。

「うあ…ぁ……なんで、なんでっ、下着姿で俺の上にいるんだようッ!? いい加減夜這いに来るのは止めてくれ!…っていっているだろうがっ!!」
「相変わらず初心なところがかわいいわね。うふふ、こんな下着姿だけで恥ずかしがって……何度も、あたしたち姉妹のか・ら・だ・を好き勝手している色男のくせに……クフフ」

それが、どうした?と、言うみたいに女の肉体をすりつけられた。下着だけの姿で。
確かに、彼女の言葉には嘘はない。
が――同時に事実でもなかった。

「だって、それは……だっていつもいつも!おまえ、お前たちがぁ」
「うふふん。可愛いな。お耳ふぅーふぅーしちゃう!」
「くあっ!?こ、こら!あ…くうン!あ…やめ!ちょぉ!?」

痛いところを突かれ、言葉に詰まっているのか、言葉がまとまらないのか。
まるで、癇癪を起した子供のように、竜也はまともに喋れなかった。

「ほらほら。気持ちぃぃでしょう?」
「くおっ!ぉぉ…っ!」

そんな竜也の童謡を見透かしているナタリアは、さらに親密に体を擦り合わせる。
見事な天然巨乳のふんわりさが、しなやかさが、ほんのりとした温もりが――脳に現実として伝達されてくる。
まるで、子供のように――竜也はナタリアの色香に翻弄された。

(くあっ……この…デカすぎるぅ!卑猥すぎるぅ!)

その上、彼女の肉体美と黒く布地の少ない下着の組み合わせは、ナタリアのチャームポイントを極限まで引き上げているのだから、責められている竜也には、堪ったものではない。
普通なら、積極的な女性が男に迫っている光景だろう。
しかし、残念ながら唯川 竜也とナタリア・ジェラルド――を含む三姉妹――の関係は特殊で、
竜也は、数分後の未来を予測してしまい、強引に枕元まで後退した。

「もぉー、何で逃げんのよ? こういう時は『食わねば男の恥』でしょうが。覚悟しなさいよっ………お姉さんが気持ちよくして上げるからっ」
「い、イヤだっ! 勘弁してくれよ、折角アンナから取り戻せたんだからっ!! ケイトの約束もあるのに!…ここでお前に体を入れ替えられたら、三ヶ月以上も戻ってないことになるんだぞっ!?
……だっ、第一にいつも楽しんでいるのは、お前らだけじゃねえかぁぁ?!」
「そんなこといって…リュウヤだって楽しみにしているくせに。……我慢はよくないよ? ……それに
私たちの体と釣り合っている竜也の可愛さがいけないんだから、こっちの性欲も満たして貰わないと……ほら、数時間は自分に戻れた訳だし、問題ない!ないっ!」
「何その不条理ッ?! 俺は可愛くないし!いじらしくないし!色っぽくない!! …それに何で自分の体にいられるのが数時間しかないんだよ?!!…わぁ! こらぁ、ヤメろ、ナタリアっ!!」

逃げようとしても、ナタリアは上品な皮膚を重ね続けて来た。
イヤらしく体をくねらせ、密接してくる。
小動物のように身の危険を察した竜也は、ドアから逃げ出そうと身体を強張らせた。

「ん…くうっ……!」
「むだむだ。諦めなさい…うふふ」

しかし、習慣とも言える麻薬のような痺れに、体を思うように操ることが叶わない。
迫りくる宝石のごときエメラルド・グリーンの瞳から、彼は逃れられなかった。
これから起きることは彼女に好意、または欲情の類の情を抱かなければ、回避できることだと、
彼自身も分かっている。
そう、分かってはいるのだが、どうしても欲情してしまう。
欲望が高鳴り、四肢から順に麻痺が深まった。

(くそっ…やらけぇ……いい匂い、だ……ううぅ)

体が麻痺しても、体の自由を奪われても、彼は欲望を滾らせた。
生憎なことに、彼女は魅了できない男はいない、と断言できるほどの美女。
三姉妹は全員美人だが、ナタリアが一番、大人っぽい色香を放っていた。
髪の優雅な匂い。
と、微かながらも臭ってくる雌の匂いの二つの体臭が思考を曇らせる。
強制的に異性を意識してしまうナタリアの魅力に、竜也の理性とは反対に体は高鳴り、支配欲が満ち満ちてくる。
これまた生憎と――否。
『皮肉』なことに、唯川 竜也と言う人間は、ナタリアのような美女に迫られて、邪な感情が沸かないほど『男』を棄てていなかったのだ。

「ダーメ。嘘吐きのいけない子にはた~っぷりお仕置きしないと……年長者として。――ほら、紋章だって既に浮き彫りになってきたから、あともう少しだよ」

紋章と呼ばれる刺青と真ん中に真紅の碑石が竜也の額に現われた。
同時に、ナタリアのおでこにも麗しいブロンドの髪の間から宝石が見え始める。
ただし、彼女のは色違いの、真逆の、ディープブルーの宝石だ。

(くそっー!! また、またもかよぉッ!? ……ああ、いけないと、思いつつも俺は、俺って奴はぁー!! こっ、らぁぁやめてくれえぇぇ!!)

額に現われる単調な紋章と赤いガラスの粒が、完璧に光臨したら最後、竜也は昨日までと同じように心身ともに弄ばれてしまう立場に落とされてしまう。
怯えきった心。
しかし、その反面、ナタリアが言ったような禁忌の欲望が走る。
反撃しようとするも、既に遅い。
ナタリアに限らず残りの姉妹たちにも『*****』を強制されて最後まで突き放すことが叶わないのだ。
押しの弱さに殺意すら抱くし、本当に自身が望んでいるのかと、疑いたくもなる。
いや――もしかしたら本当に――本心で望んでいるかもしれない。
ただ気付きたくないだけではないのか。
そう思ったら、恥辱心の奥底から、ちょろちょろ――と、未知の感情が沸いてくる。

「ああっ!くううぅ…っ!」

泣きたくなる心境のまま竜也は抵抗ひとつ示せず、儀式が終わりを迎える。
竜也とナタリアの額に浮き出た赤と青の宝石が、深く眩しく光を灯した。

そして――ナタリアは竜也の唇を奪う。

外見上は普通の口付け。
だが、これは単なる儀式行為。
愛情表現ではない。
が、それでも嬉しく思う自分がいた。
そう思ってしまうのは、『女』に飢えている証拠か。
はたまた、彼女たちと一緒に、この遊戯を楽しんでいるのか。
此の頃は、毎日のように悩んでしまう命題だ。
もっとも、竜也には、そんな命題を考えている余裕はない。どんどん、『自分』が奪われる。
『唯川 竜也』が、遠退いていく。

(うがあぁっ!!やめ…おおっぉぉ)

紋章と宝石の魔力がナタリアの肉体から魂を竜也の肉体へと、注ぎ込む。
受け皿となった竜也のほうは、内部にナタリアそのものを感知し、同時に精神と肉体の連なりが消失する。
文字通り、神経が切断されていくみたいに、感覚が無くなる。
心だけ足掻き続けるも、既に視覚すらもなかった。

終には、全身からまったく神経を感じられなくなる。
どんな回数を重ねても、馴染むことはなく――畏怖と不安と、一粒の悦楽と共に――唯川 竜也の意識は肉体から完全に消えた。

(――あぐうっ!?)

そして、気がつけば竜也の目の前に奇妙奇天烈ながら『唯川 竜也』がいた。

「ひぁ?…ひぁうぅ!」

思わず、可愛い悲鳴をあげてしまう。
ずっしりと重い胸とお尻、そして繊細な肌の感覚に、引っ張られて。

「ふふ……成功だね。リュウヤ」

先ほどまでの二人が逆転したように、遊び人の印象を強く滲ませ、ニコニコしている『竜也』。

「あっ…ああっ…こんなのぉっ…」

そんな竜也対して、『ナタリア』のほうは過剰なアプローチを急に恥じたかのように顔が赤く、目が潤みきっている。
――否、違う。
竜也とナタリアの心情が反転したから、表情や仕草が変わったのでない。
彼らの魂と肉体が入れ替わったのである。
あの接吻でナタリアの魂は竜也の肉体に入り込み、竜也の魂はナタリアの肉体に移し変えさせられたのだ。

――今や竜也が『ナタリア』になり、ナタリアが『竜也』。

これが発動された魔法――宝石と紋章、そして魔力の効果――であり、長女から始まった
肉体交換による性遊戯だった。

(2)
竜也は自分の身体を調べた。
もう半年以上続いていることだが、未だに慣れない他人の、異性の体。
すらっと伸びた手足に上質の肌。
特に意識を奪うのが胸を襲う重量感だ。
山のように重い。
と言うか、まさにお山のように巨大で真ん丸な乳房。
その特大のバストが否応なく、瞳の中に映し出される。
体積に見合うだけ、思う存分に蠢いていた。
揺れ動く感触が肌から伝わる。

「あんっ…」

淫猥さと気高き美しさを兼ね備えた女の肉体。それを隠している下着もド派手だった。
むしろ、色気を強調している黒のブラとショーツ。
確信を持って、触れていく顔も、ソフトできめ細かで男のモノとは断じて違う。
――否。
そもそも、全身を調査していく手が既に男では有りえないモノだ。
豊満な乳も、空洞が生じている股座も、後押しのようなもの。
唯川 竜也の全てが女性そのものになっていた。
間違えようがないほど、完璧に、ナタリア・ジェラルドの肉体なのだ――自分は。

「さぁ、じゃあ楽しみましょう――リュウヤ。……クス、楽しんでいないっていう虚勢は無意味だってことを教えて上げないと、ねっ?」

あっ、と叫ぶ間もなく体を回転され位置すらも逆転する。
思わず布を掴むと身を隠すのは、外見がナタリアな竜也。
何とも女らしい行動だったが、今の竜也は間違いなく『女』である。
そう、その行動は、とても正しかった。

「可愛いよ、リュウヤ……」

が――竜也になったナタリアを刺激するには、十分である。
彼女は雄々しく喉を鳴らすと、さっそく『男』に成り切った。

「うふふ…」
「ひ、ィ…ぁ…こらっ!」

それが例え、自分自身の体であっても容赦なく、胸を擦り、震える彼の唇に指を当てる。
最高に魅惑的な美女が、自身の魅力に魅入られた暴漢に襲われている――
と、いう言葉が相応しい有様だった。
「や、やめろ――いや、だ!!……やめおぉっ!!」
「反抗する姿も素敵ね、リュウヤ。……うふ、癖になっちゃうわ、この逆転プレイ」

ナタリア(竜也)の反応に感動したのか、血を滾らせ、興奮する竜也(ナタリア)。
竜也の体を奪い好き勝手する彼女には、ゾクゾクのお楽しみタイムなのだ。
しかし――。

(既に重症だ! お前らはっ!三姉妹共々――盛り過ぎだァッ!!)

これから『ナタリア・ジェラルド』として甘い夜を強制される竜也にとって小悪魔とのダンスパーティーでしかなかった。

ナタリアだけでなく、次女や三女すらにも――『女』として抱かれている現状。
理性を保てる自信など当の昔に失っていた。
竜也は襲われる恐怖で目を瞑りながら、己が不幸を呪った。

(どうしてこんなことになるんだよぉ!?あの時にぃぃ……やめっ、やめておけばあぁ――ァ!!)

大学受験に失敗し、親から最後通告を言い渡されて、切羽詰っていた。
だから、現実から逃げたかった。
しかし――『ここまで』の非現実など望んでいない。

「なぁ…話合わないか?って、こらッ!?ヤメ、…んんっ…ちょ…このぉぉ、早速ですかぁっ?!」

もっとも、竜也には後悔する時間すらも許されていなかった。
セクシャルな下着姿で、男に襲われているアメリカ女性――それが、『今』の竜也なのだから。
すっかり男として発情したナタリアが、優しく、けれども厭らしく吐息を乳房に吹きかけた。

「どう、あたしの体……あたしの胸はたぁーぷり感じるでしょう?」

無論のこと、体へのスキンシップは――飛びぬけて、胸への愛撫は――さらに熱烈なものに。

「やめ…んん!この!」

説得は無駄――そんなことは分かっているが、それでも抗わなくてはいけない。
健気に手足を上げ、起きようとする。

「こらこら、キミぃ。正直にならないと…」
「ひぁぁ!ひぃ…こ、こらあ……んんっ…ひぃあんっ」

しかし、やはり無意味だった。
ナタリアが操る『唯川 竜也』の手が、不躾に胸に支配する。
まずは、と言うように、軽く揉まれた。
お次は乱暴に愛撫され、大きな乳房が変形していく。

「あん…ああっ…っん!」

ぐにょり、くにょり、と形を変え、汗ばんでいく乳房。
拒絶したいのに、甘美な快感が熱湯のごとく女の身体に注がれていく。
魔術支配とは違う、純粋なる性欲に体が痺れる。

「ひっ…んんっ!」

痛いくらい強烈に身体を過熱していく愛撫。
竜也は女へと――『ナタリア』へと、急激に染め上げられていった。

(はぐ、んっ…今日こ、そ…は…んあっ。やっぱり無理だあ――っ!!)

竜也の瞳から涙が、ポロポロと流れ出す。
煩雑な気持ちよさが、快感に浸ってしまい自身の弱さが、惨め過ぎた。

「まてぇ…ひゃっ。…まってくれ……あぁ…っ…くふぅ…この!」
「あはは、もう感じているんだ。でも本番は、これからなんだから覚悟してね。……さて、いつまで意地をはれるかなぁ、自称不能くーん?」
「そ、んな……あぁはぁん、…おっ、俺だって…あぁ!?…バっ、…ばかぁ、くン…っ…やめっ…ロ…っあひぃ!?」

巨乳が、黒き鎧から解放された。
ただ、それだけなのに、竜也のピンクの恥じらいと興奮は、速度を上げて広がった。
重くて、熱くて、意識をしっかりと保てない。

(乳首ぃ…があ…っ…熱いぃ!熱いし、重いぃぃ!!)

その事実を認識した途端、びりびりと電気が走った。
乳首が硬化する。
ただでさえ大きい胸が支えをなくし困っているのが、ヒシヒシと伝わってくる。
この乳房は化け物のようなボリュームの癖に、赤ん坊のように竜也の胸倉にしがみ付くのだ。
そして、同時に高揚感を膨らませる。
例えるなら、神経を擦るような高まり――少なくとも『男』ではありえない快感が竜也を押し潰す。

(ひぁ…んん!び、りり…するん!んんっ」

邪魔だが離すことなど考えられない、発情する乳房。
それほどの快感を与える二つの宝珠――"でも"あったのだ。

「ずるうっ…やめて、くれ。ナタリア…ぁ…ダめぇ……きぁうんんっ!?」

熱せられた乳房に振り下ろされた冷気の鈍器。
竜也は咄嗟に自分の胸を見やった。

(しっ、し、舌はダメだろうおっ!?)

巨大な乳を攻め立ててくるモノの正体。それは、舌だ。
元は自分の舌が、今は自分のものと化している乳を舐めていた。

「ひゃ…んっ…ああっ!だ、ダメぇ!や、やめぇぇ――っ!?」

舌が、二つの球体の合間を舐め下ろし、そのまま右の塊を攻め立てる。
ナタリアの体の快感が、そのまま竜也に降りかかる。
それこそ、気が狂ってしまったかのように、竜也は嬌声を繰り返した。

――ジュルリ、ジュル、ジュルリ、…ジュジュ……チャ、グチャリ。
卑猥な音が、竜也の心を打ち壊す。

(ひっィィイ……!)

肌の攻めだけでも拷問なのに、濡れた肉が繰り出す音まで加わっては、混乱は増すばかりだ。
イケナイ気持ちは、もっと跳ね上がる。
切ない高揚感に、思考が鈍る中――。

「あひっ…きも…ちぃぃ…んあっ!あっあん」

自分の心と、増え続ける喜悦とが――確かに、融合した。

(3)

(んんっ…反則ぅ、…んひぃ!こ、こっんな…つ、…ぁあン、………疼くくうぅ)

ナタリアの舌が這いずり回り、だんだんと乳房の中心を目指してきた。
声をかみ殺し、耐えようとする竜也。
だが、唇からは簡単に雌の喘ぎが漏れ出していく。

「はぁあっ!んんっ!はあん!」

そのことが女性として、『女』を感じてしまっていることを彼に執拗なほど自覚させた。
汚された、汚されてしまった。
乳首が、また反り上がる。

「あ…あぐぅ!ち、乳首が…乳首がああ…あんんっ!」

構って欲しくて――いや、弄って欲しくて、堪えられない。

「はぐぅ…はううぅ!んんっ…はぁ…はあぁ」

綺麗なお山の頂上に冷たい小悪魔が到着し、これで終わると安堵する反面、物足りなさそうに息は吐き出した竜也。
が、しかし――ジュるっ、ウウゥ!!

「あひんっ!?、ああ!…んんあああっ!?……こひぁ、ら…っ…ひゃッ、バかぁバカァァっ…ばっ、むンはっ?!」

ナタリアは息を吸い込むように、特大の胸を口の中に吸い上げてきた。
竜也の身体の肺活量が凄いのか、こんなにも大きな胸が丸々と、食われていく。

「んむ!!…ボ…ジュっ!…んむうう!!」
「だらぇっ!…ンひ、あひぃああっ!!」

喜悦が口を緩ませ、唾液を醜くばら撒いてしまう。
しかし、不思議なことにナタリアの体は、卑しく堕ちながら、芸術のような品質を保っていた。
むしろ、悶えて乱れ、女の快感に溺れていくほど、魅力が増えていく。

「はぁっ!きゅうんんっ!!やっ…ん!」

まるでモノが、歴史を重ねるごとに価値が上がるように。
けれども、速さだけが、桁違いで――竜也に『女』の魅惑が宿っていく。

(こんなのにぉぉ――っ!? へンにぃっ…あんん!っやんん…!!)

ナタリアがキスを――と言うか、吸引を止めて、口から乳房を解放した。
限界一杯吸い上げられた肉の塊がプリンのように震えながら、誤差なく復元する。
ところどころ、真っ赤な痣を残して。
痛みと喜悦が、鐘のように、理性に響き渡る。

「可愛いよ、リュウヤ」
「あンっ!…や、めェェ、…ひゃイぃぃん!…ひぁぁッ!…んんっ…そこはっ……ひィぃぃ!ゆるし、てえっ!…きぁぁああ!?あきゅ、んんっ!」

またも、竜也は喘いだ。
今度は思いっきり――それも、『男』の握力で――彼女が、右側の乳を押しつぶしたのだ。
ナタリアは竜也の物となった巨乳に数箇所、血にような痣を残すと、もう片方にも同じような行為を行っていく。
しかも、右乳の興奮が冷めないように、優しい愛撫を継続していた。

「あんっ、あひン――っああ!あんん!」

これが、また絶妙だった。
アメと鞭のように竜也の心を揺り動かし――ナタリアの体と融解している気さえ起こさせた。

「ひぃん!ひぁんん!ちょっ…やっ!こんなぁ…あっああ」

逃れたい気持ちは健在だが、止められない。
上半身の奥が、ゆっくりと焦がされていく。

「んふ!だ、だめ…っ!いや…だ…ひぁああ!!っ……!」

最後の衣服が濡れていく。
あの濡れた衣服独特のおぞましさを感じながら、竜也は嫌悪感よりも汚辱で火がつきそうだった。
しかし、そんな感情すらも竜也には許されていないのか。
ナタリアは胸への愛撫が終わると、唐突に竜也の右腕を持ち上げて、脇に顔を近づける。

「ふぁンン?…っっ!?ば、ばかッッ?! やめっ……何ぃ考え…あぁ…やめぇっ!?」

堪らず、叫ぶ。
だが、ナタリアは、くんっ、くんっ――と鼻を動かした。
それこそ盛りがついた獣のように鼻をひくひくさせる。

(ひぁ…ひあああっ!…だめえぇ!…やめてぇぇっ!!)

匂いを嗅がれてしまう。
汗を掻き蒸れまくった脇を、女の匂いを撒き散らす脇を。
慙死の気持ちが、心を圧迫する。
最後まで反抗するが、気落ちした体は前よりも、弱弱しい。悲しいほど無力だ。

(なんでぇ…?だ…ダメだよぉ、お……っ)

そして何故か――本当に理由は分からないが――股間の『女』が漏れ出す滴を増やした。
股間の湿り気に、羞恥心が燃え上がる。
同時に屈辱の中、表現し難い快感も竜也を襲った。
まるで女として汚されていくことを、名誉を感じているように。

「んん、凄く、くさいっ。 こんなに感じちゃって、期待していない? 望んでない? どの口でいったんですかぁ?」
「~~~~~~~っっ!!」

心の防衛本能を切り裂き、欲情した女体の本能が一気に竜也を襲った。
悲鳴にも成らない喘ぎが、充血した眼が、真珠のような涙が、竜也の心を表す。
彼は心底、悲しんだ。
だが、『男』でありたいと思う願いも、欲情した女体の前では、瞬く間に澱んでいく。

(んん……もうダメぇ、ぇ………欲しいぃぃ、欲しいようぅォ)

そこには唯川 竜也であり、『ナタリア・ジェラルド』でもある女性が、体の奥底から性欲を求めて、淫靡という意味を体現していた。
腰を振り、艶態を見せ付ける。

「…ヒッ…ク…っ…アツいい…あはぁンン、……アツイ、よぉぉ……おかしくぅなっ……ちゃちゃうゥゥ……んンッ!なた、リアぁ…やめぇて…ひくぅン!へんになちゃう…よぉ」
「ふふ、認めたわね?最後には認めるんだから、素直にすればいいのに……」

衣類を捨て去り、露わになる全裸の男――竜也の肉体。
目の前の体から噴出する塩気が鼻腔を攻撃してくる。
思わず、竜也は考え込んだ。
どうして人間は、他人の体臭、特に異性の匂いに敏感なのだろう、と。

(んんぁッ、……落ち着け、……アレは俺なんだ。……自分に欲情して、どうするだあっ!!)

ギリギリのところで理性を保とうとする竜也だったが、明らかに虚勢だ。

「どう欲しくてたまらないんじゃない?」
「だ、だれっがぁ!…んひぃ!んんっ…ああっぁ!」
「それなら別にいいけど?あたしはアンナを起こして、セックスするから」
「えッ!? …っぁ、……そ…そんなぁ!……んっむうぅッ!!」

ぐらつきを逃がさず、何かが竜也の唇を奪った。
強引にナタリアの舌先が、侵入してくる。
嫌がりながらも、受け入れ、自らの舌先を相手の舌先に合わせた。
螺旋する口内の動きが、とても心地いい。

「んむぅ……っ!」
「んん…っむ…、ちゅぅ」

竜也とナタリア――舌と舌のダンスが、より肉体と心を溶かしていく。

(あっン……やだァ……ッ!)

離れても舌を伸ばし、相手を探してしまうのを、竜也は止められなかった。
体中のあちらこちらが全て、均しく責められたくて、仕方ない――芯が焔のようだ。
劣情を滾らせては、舌を伸ばしていく。

「あうっ! あン…ぅ…うう…あっ……あうぅ…ぐう…っ」
「ふふ…そのモノ欲しそうな顔はなにかな? 舌まで色っぽく突き出してきて……んん?」
「いっいうなあっ!…ああ!いわっないでぇ!あっああ、あはーンっ!はッ、ンン…ほ、欲し…い……っン…ほゅ…しあぁぁっ!」

言葉と共に、下着越しにナタリアの指が竜也の秘部を刺激する。
ついでとばかりに、極小の芽を優しく摩っていく。
ああー―それだけで、体はオモチャのように反り上がり、心が欲情した。

(あぁ、くゥゥ……欲しい、もうダメぇ…)

男を目の前にして、こんな状態で放置されたら半狂乱になる。
切なく――ただ切なく、ナタリアの充血しきったペニスで、お腹を貫いて欲しい。
最早、その思考しか、竜也にはなかった。
あちらも苦しい筈。
ビクビクと何回も痙攣しているく男性器が、その証拠だ。
『お互い様』――という大義名分のもと、竜也は自身の欲情を受け入れた。

「あうン!ああっ…ナ、んっ…タリア…ほしぃ…いれて…くださいぃ!おねがぃっ……」

欲情した声で竜也は、いや『ナタリア』は一人の女として言葉を発した。

「おねえぇがいぃ、ぃ……っ…イカせて!ガマンできなィっ!」
「また、あたしの勝ちね。――それじゃあ誠意を示してもらいましょうか、ナタリア姉さん。いい?今は俺がリュウヤでキミがナタリア姉さんなんだからちゃんとしよう…ね?」
「あっうゥゥ――は、はぁ、ぃ……っりゅ、リュウ…ヤ」

竜也は、目の前の人物を『唯川 竜也』として認め、自分が『ナタリア・ジェラルド』だと認知した。

(4)

(あぁ……っ…何で、なんでえ…んっ…ん…こうな、っちゃうんだ…ゃ……ようッ!?)

誘惑に負けてしまい、泣き喚く竜也。
しかし、最早、ナタリアの命令は絶対だ。従うしかない。
身を焼くような侮辱に耐え、彼は肉体に合わせて、行動を、仕草を選んだ。

「は、早く…ッ。はやくうぅ…私…わたしぃ…に、いれぁっ…てぇ…」
「ふふ、淫乱だね。……慌てない、まずは――イケナイお姉さんには罰だよ…グ、ふふ」
「えッ!? なに……何のつもり、…っ…な、…あっ!…りゅりゅぅ…ウヤ」

充血させたペニスを竜也の女性器とは別の位置にある眼前に固定した。
卑猥な猛毒と化した汗臭さが鼻を通じて、脳を突き抜けた。

(何で………はやく、して欲しいのにぃ!!んんっ。欲しい、のにい!………ってまさか!!)

何をするべきなのか、が分かってしまい、竜也の顔から血の気が引いていく。
スッカリ立ち上がっている相手の顔を見上げて表情を伺う。
完璧な獣の眼光を宿し、竜也は――否、『ナタリア』は『彼』が本気であることが分かると、恐れながらも、眼前で、立ち誇っているブツ――ペニスを改めて凝視した。

(あっ…ゆる…ゆる…して……)

女として逝かされたり、際ど過ぎるプレイをやらされたりした中でも、積極的に遣りたくないプレイの一つ。
ナタリアは、それを命令した。
竜也に、それをやれっ――と。
鼻先で、ナタリアのペニスが真っ赤に流動する。

「ん…っ…あっ…ううぅ」

自分自身の一物の筈なのに、姉妹たちの奪われると、何故か恐怖の対象へと変わってしまう。
それは異性になってしまった証なのだろうか。
そのことが彼女たちの方が『男』に――唯川 竜也の肉体に相応しく思えてならなかった。
劣等感は、恥辱は増すばかりだ。
が――今は、盛る欲情の方が、遥かに大きい。
仕方無しに、覚悟を決めた竜也は勃起するペニスの迫力を受け止めた。

(いぃ、…イヤだ。……けど、けど……これしない……ない、とぉぉ!)

細く錬成されたナタリアの両手を使い、息子だった怪物を捕縛する。
流れる血液の鼓動と熱い男の体温。
ああ、何故こんなにも女になっただけで『男』を敏感に感じてしまうのか、と呪うが――その間にも、お腹の中心で性的欲求が高まる。

「もう、じれったいッ!!」
「んんっむううっ!?……んぐぅむんんッ!」

もっとも、自ら口に運ぶ必要はなかった。
暴走したナタリア本人が大きく腰と臀部を揺らし、竜也の口に男性器を差し込んだのだから。

「んむぅ…っ!んん!」

頭を押さえつけられ、竜也の口に強制的に怪物が侵入してくる。

(うェ…このッ…今、自分でしようとしてたのに…強引すぎだよぉ!)

男しか分からない支配感と高揚感。
悲しいながら複数の女たちと関係を持ちながら、未だに『男』としてやれたことがない竜也には、
この良さが理解できなかった。
兎に角、汗の味と男の不純物が混じりあったお世辞にも美味しいなど思えない――唯一の救いが匂いが、それほど苦ではないこと。

「はむっ!んんっ!…んっ…ひぁむっ」

むしろ、いい感じに鼻を突っつき、心を麻痺させてくれた。
回転を上げて、竜也は男性根を舐め上げる。

(はぐぅ…あっ…ああ…のまない…とぉ。なめ、なめないっ…とお!ひぃぃ…!!またでっかく、でっかくなったああ!!ひぃあ!ひああんんっ!)

どんどん、くさい匂いが、病み付きになる。
ナタリアの男性器が口を支配し、膨張率を上げていく。
竜也は覚悟を決めて、本格的に嘗め回す。

「んむ!んんっ…あんっ!あんっ…ああんんっ!」

涙が零れ、淫欲に溺れた。
『彼女』の眼に、深く危険な光が宿る。
一方、男の快感に浸っている本物のナタリアは、ご機嫌だった。
ご奉仕してくれている自身の肉体になっている竜也の頭を撫でて――見守る。

「よし…よし。上手だよ、ナタリア姉さん」
「……んんッ……はむン……っぐふんっ、ン゛…あん……ッンンング」

嫌悪感を抱きかかえながらも、咽ながらも、けして舌先を止めない竜也。
熱く太い、今は他人の息子を口に含んで離さないように、硬く唇を閉じる。

「あむっ…ん、…んんっ」
「そうそう、いい感じ」

舐めても、舐めても、嫌な思いは消えない。
しかし、それでも竜也は、ペニスの上も下も舐めていく。
ぼじゅぼじゅ――ぼっくん!。
ペニスを駆け巡る流動が口に響いた。
涙目で竜也はナタリアを見上げる。だが、切り上げる気配は伺えない。

「だすぞぉぉ……くんっ!」

そして、掛け声ともに溢れ出して来るソレが竜也の小さな口から滲み出た。
マグマのように熱く、粘っている。
喉にまで進んできた。
精液だ。
直ぐにでも吐き散らしたい。
もしも、もし吐いてしまったら――と、従順なメスの気持ちが、嫌悪感を押さえ、精液を無理に体の中に流し込んだ。

「…ンむうぅぅ!……ンんんっ……むぐんっ!!はむっ、んう!」

ごくんっと、喉がなる音に少し我を取り戻すが、直ぐに切なく求める女の本能がぶり返した。
残りの汁を、その美麗な口で吸引して、舐めていく。
唇の外に溢れた汁は舌先で拾い、それだけでは飽きたらず、長く鋭い指先で絡めとり、意地汚く舐めていく。
最後の仕上げに、出した筈なのに瞬時に立ちはだかった怪物を竜也はもう一度、口に含んだ。
やはり苦く、不味く、そして心が満たされる。

(……っン………こ、これじゃあ、ほんとう、に……雌ぅ、奴隷じゃッないぃかあっ)

何一つ指示されていないのに脅迫概念にも似た感情が、肉体を動かした。
自ら女として男を求める。
その禁断の気持ちが脳を超えて、体全体に行き通ると、新たな高揚感が湧き上がった。

「んんっ…めろっ…んぱっっ」

奴隷でも構わない、女でもいい――それは灼熱の情愛。
背徳と肉欲の狭間、極上のエクスタシーに肉体が律儀に躍り狂う。
そう例え、自分自身だとしても竜也は『ナタリア』という一人の雌になりきり、目の前の『唯川 竜也』という雄に屈服する。
反抗できるモノなら反抗したいが、そんなことが出来るほど性行為の恍惚は貧弱ではなく、出来たとしたら超人の域だろう。

「ひゃっ…ぶ…ろ、ろぉ! …んひィ」

そして超人どころか、ただの凡人でしかない竜也には。
ソフトクリームから口を離すかのような音を響かせて、彼女のペニスから離れる。
後は、ただ虚ろに男を、肉体を暴虐的に支配してくれる主を求めた。

「な、なたりっ――りゅ、リュウヤ…っんん、お、お願い!…わた、し…を…お、犯して…あっ…め、めちゃくちゃにぃ……っ」

上を見やり『彼』の加虐的な笑みを見た瞬間、じゅんと竜也の股間が湿った。

(5)
ナタリアは黙って、自分の肉体にのしかかった。
発情しているパーツの全てが美しく、そして愛らしかったので――というか、もう我慢できなかったので、襲うことにしたのだ。

(ああ、わたしの体のはずなにぃ……エロかわえぇ!)

竜也が『女』の欲情を感じてしまったように、異性の肉体で楽しんでいるナタリアもまた『男』の欲情を感じていた。
それほどまでに『女』になった竜也は、女からも、男からも、魅力的な一輪の花だった。
本人は否定しているが、事実、竜也が三姉妹の誰かになっているときは――外見が同じでも中身でこうも違うのか、を体現して――とても淫猥だった。

(まったく、いけない子なんだから…お仕置きしてやる!)

股間についている息子を、『ナタリア』の空洞に狙いをつけるために、濡れきった黒き衣を優しく、脱がしていく。

(こんなに、びちゃびちゃで、なんていやらしの!?っていうか、なにその顔!?…アンナやケイトのリュウヤも美味しそうだけどあたしのリュウヤも実に食べごたえがあって、もう最高!!)
「ふふ、こんなにクリトリスを充血させちゃって……」
「ふぁッ!…あうぅ!…は、恥ずかし。ぃ、…言わ…ない…きぁふうっ!…っ……ひはっああッ」

ナタリアが感じる照れとは次元が違う羞恥心で声を張り上げる竜也。
脚を上げられ、見っとも無い姿を強要されている姿は、まさに女、いや『雌』だ。

「は…恥かしい…やめて…んっ」

開脚される恥辱を受けながらも、竜也はその苦痛すらも飲み込む快感に打ちのめされた。
どくんどくん。
心臓が、心底、煩かった。

(うわっ、うわ、わあ!んんっ!どっ……ドキドキする!)

最初のころより二倍ぐらい膨らんだ肉芽。
ソレを軽く小突かれただけで竜也の体は跳ね上がり、臀部が浮いた。
愛する人に包まれている女のように心臓が限界を超えて稼動する。
――それでも忍ぶ。もっと我慢すれば、と。

「っとと、もうこんなことしなくても十分濡れているか…………」
「んんっ……おかしぃ、くなり、…ヒャああんッ…ィィ……我慢…でき、ないよお……」
「ふふ、今日はここまでにしといてあげるね……じゃあ早速―――」

快感の弱点を責めるまでもなく、陸に上がった魚のように必死に求めている竜也に、あくまでも優しく大胆に、暴力的に――ナタリアはペニスを捩じ込み、挿入した。

「―――んああぁっつ!!ひいいっ…わ、わたしのなかっにぃぃ…は、挿って……くぅ、るうッ!!」
「うっ、……しまるぅ、しまるっ!………ほ、ほんとうに淫乱なナタリア姉さん、」
「…あふうんんっ!やだ…気持ち…よすぎぃ!あっはあ…んんっ!きゃう!」

完全に素で『ナタリア』に成り切ってしまっている竜也は、眼を閉じて、己の肉体の中に突き進んでくる異物の感触を、女として受け入れた。
思わず、うっとりしてしまう。
例えようのない満足感に満たされて。

「んひあっ!わたしィ…わたしぃぃイッちゃううぅ!」
「いいぞ、逝け!イっチャええ!!」

その振動と感触に軽く逝きかかる竜也。でも耐える。
まだ、まだ――だ。
あの際奥の祭壇で、爆発されるエネルギーを全身で受け止める快感。
あれを味あわないうちに果てるなどイヤなのだと、意識を保つ。
男として犯されたくないというプライドなどいらない。
ハヤく、ハヤく――欲しい。
ただ『彼』が己の奥底に届くのを望む。
そこで行われる新たな命の誕生祭の喜び、恐怖、痛さ、――が、弾け飛ぶと考えただけで、逝きそうになる。
快感が限界まで高まり続けた。

「おくうぅぅっ!、…奥までつら、ぬ……あっ…らんぁ!! そこお!そこを……もっと……つっ…ついて…あっ!あっ…ああっん…」
「わっ、わかって…るうっ…て……全く辛抱が足りないなぁーッ」

耐えた苦労は報われ、怪物が聖域に到着して暴れまわる。
その度に汗は倍になり、体が弾け飛ぶ。
ただでさえ、とろんとした竜也の瞳が、より常軌を逸していく。
ナタリアのほうも夢を見るように、否、『夢に向かう』ように、ペニスにエネルギーを集めていく。

(――ふぐわぁああっ!! もう、ダメめぇぇぇ、いっち、まぁうよおぅぅッ!!)

もはや今の竜也は、完全に性欲に溺れてしまっていた。
男の竜也が、それで良いのか!?――と煩く騒ぐが、それでも、それでも。

「あっ、あっあっ! いッ…イかっせぇ、って、え…ぇ……大きぃいのぉ……くるう!んぐひぃ…!」

『女』が勝ってしまう。『雌』の衝動に屈服してしまう。
肉体の本能に飲まれて、発情の余波を全身全霊で受け止める。
早く犯されたくて、直ぐにでも絶頂したくて、竜也(ナタリア)を見上げ、哀願する。

「犯してぇぇ…俺の中にぃなかぃい…んぐぅう!…あう…んんっ。…どぱどぱっ精液…で満たして…んひゃう!」
「じゃあ…何っていうんだっけ……ナタリア姉さん?」

邪気がないウインクと笑顔で覗きながらも残酷な要求をしてくるナタリア――否、『竜也』。
明確に指示されたわけでないが、心が欲望に突き動かされて最適な答えを選ぶ。
そして、叫んだ。

「わ――私、…を…くふン…ナタリア…をっ……イカせっ…あんっ…イカせてっくださいっ!…ひぃああんっ!」

『ナタリア』が言葉を漸く紡ぎ終わると、『彼』の声が聞こえた。
「いく…ぞっ」

胸は乳首を立てて欲情し、膣口は恥知らずに蜜を漏らしている。
そんな暴走する熱い体に堪えながら――『ナタリア』は、確かに聞いた。

「いくぞッ、ナタリア」

その言葉で全身が沸騰する。

「――あっ、はっ、あぁンン!…ッ…イッくぅ、イッくうう、イクゥゥううっつつ!!」

どぴゅぴゅ――!!どびゅぐううぅ!!
爆ぜる生命の息吹が激痛を伴い襲ってくる。
逃げ出したいほどの痛みなのに、心には確かな充足感があった。
これが汚され、犯される女の快感。
恥ずべき最大級の屈辱が、嫌ではない。
犯されていることが愛されているように、思えてならなかった。

「あう!あううぅ!んまぁぁ!すごしぃ…ナタリアの中…一杯、いっぱいぃ――あひぃぃ!!ひぁぁ!!あっ…ああ!まぁたぁ…きゃうぅぅ!」

じゅぱぱぱ――ンっ!!
さらに竜也に精液を流し込まれた。
自分の、『ナタリア』の奥底に――それも大量にだ。
嫌悪感も不快感もあるが、無意味だった。
意識の大半を縛るのは『女』としての喜び。
同じように、ナタリアも『男』として幸せを味わい、腰をけして休めない。

(あぁ……中ぁ…だ…しぃ…ン…されちゃ、…ッ…た。 …あ、…でも、止…めランっ……ないよ…お、ぉ…っ……気持…ぃ…良す…ぅ…ァ……っ)

彼は中出しされることに病みつきになっているのではない。
中出しされた上で――逝かされることに竜也は、ご執心になっているのだ。
愛されていることを肌で感じられるのが、心地よい。
女の快感に竜也は泥酔した。もっとも――。

「んアっ……ねえ……もっと…もっと…ンン!…っ…りゅうやぁ…もっとどぱ、ドパっ…んあ!くう…んんっ…あぐう!」

まだまだ足りていなかった。満足にはほど遠い。
体を小刻みに震わせ、反り返りながらも、まだ欲するのだ。
内部で快感が残響する。
逝たい、逝かせて――と、竜也は『ナタリア』としての言葉を『竜也』に伝えた。

「もっと…なた…ナタリアをぉ…気持ちよく…して、リュウヤっ…」
「うふふ――ナタリア姉さんは、本当にエッチで淫乱なんだから。…しょうがないない、付き合うよ」
「きぁううぅうう!あっああっんん――あんっ!!」

時間は十分。まだ夜は明けない……。

(6)
「はぁ~~、何やっているんだか…………俺は」

アレから数時間。性交し続けた二人はお互いが果てて眠る形で終わっていた。
激しい交尾。
となると、当然、汗や精液やらで、体はベトベトで――。

「んん…くう…ぅ…っ」

眼が覚めた『ナタリア』は、シャワーを浴びていた。
肌から粘り気が取れると同時に、股間から、どろどろと精液が零れる。

「ひぃ!ひあンっ…まだ、出てくる…ううぅ」

汚辱の記憶と股の筋から無尽蔵に出てくる精液に、『彼女』は泣きながら体を洗う。

「なんで…俺が…んんっ…おと、この…俺が…くぉ、んん!」

未だ竜也がナタリアで、ナタリアが竜也のまま。
つまり、今このお風呂場で完成された女性の肉体を誇示し、身体の隅々まで洗っているのは
『ナタリア』ではなく――唯川 竜也である。

「くっそぉぉ、…んん、……思いっきり中だししやがって…く、んぅ……っ……な、情けない」

指を女性器に突っ込み、中から精子を取り出す。

「は…あっ…あん」

少し感じながらも――残っているほうがイヤなので――『自分の精子』を踏ん張って掘り出す。
それだけではなく秘部にシャワーを当てて、お湯を肉穴に注ぎ、これで漸く駆除完了だ。

(あ、あそこから…こんなに……こんなに精液を注がれたなんて……ううぅ)

あまりにも非現実で屈辱的な行為の証に、竜也は泣くしかなかった。

「俺は…俺は男なんだ……なのに…んっ…こんなことって」

最後には『女』として喜び、乱れていたとは言え――やはり、男としては、男の精液をお腹の中に入れたままなのは、許せない。
無様すぎる。
何よりも、悲しいのだ。

「ふぅ…はあっ…ふう…んん!」

一層のこと、この湯を冷水にすれば、こんな気持ちをなぎ払えるかもしれない、と考えるが、
女体の敏感さを思い出し、中止した。
これで再び火照りだし、発見、犯される――そんな展開だけは避けたかった。

「はぁぁ……にしても……でかい…なぁ、おい」

ぷにぷに。
今だけは、自分の乳房を触る竜也。
『女』を徹底的に追求していった一つの答えのような肉体――それが、ナタリアの肉体に持つ竜也の感想だった。

(ほんと…すげぇ…って褒めるしかないよ…これは…)

最近、成長期を越えたというのにますますバストがでかくなったと、愚痴っていたが、改めて見ると何て巨大な胸だろうか。
そんな乳を、竜也はさらに揉む。
ひりひり痛むが、それでも揉んでみる。
そのサイズと弾力、柔軟さ、吸い付き具合――そして、自分との接着を確かに、感じた。

「はああ――でか、い」

前からFカップ級だと聞いたが、これは、リアルにFカップ以上はある。
確かに成長している。
しかも、驚異的に。
だが、そんな美巨乳を弄ばれる罪が竜也にあるだろうか。
いや、ない。
有る訳がない――が。

(ちくしょう…ナタリアにアンナめえぇ…くそー柔らかいっ)

ナタリアだけではなく、次女のアンナも何かと成長した肉付きについて愚痴っては、責任を取れと攻め立てる。
冷酷無情に、体を入れ替えた上で――『唯川 竜也』としてセックスを強要するのだ。
竜也自身は一度も女を抱いたことはないのに。
――だから、責任を取れと言いたいのは。

(むしろ、俺のほうだろっ!? ……いや、勿論、俺が男で、あいつらが女で…って意味だけどッ)

心の中で一人突っ込みは物悲しいこと、極まりない。
が、察して欲しい。
最終的には三女のケイトまでにも、体を入れ替えられて、犯され続けている日々。
『女』の身として感じる、快感と汚辱は、けして慣れることはないのである。

(うう…ゃ…ばいっ!あ…股間とお尻がジリジリ…する…。うう…俺…やばい、よおぉ!)

すっかり竜也はナタリア、アンナ、そしてケイトの性的悪戯に心を囚われていた。
特に、三回処女を失う――三女は兎も角、長女と次女も処女だったので――モノホンの女性でも不可能なトラウマを、その魂に刻み込まれたのだ。
彼女たちから言えば、着実に調教が進んでいると言えよう。

(いや…毎回毎回、ナタリア……や、アンナ、…ケイトにまでいいようにコントロールされる俺も、俺だけど――女の体、気持ちいんだもん…っ)

女の柔らかい肉体が男の強靭な肉体に愛される、抱きつかれ支配される。
その際の快感と高揚感に、竜也は男としての自覚とプライドを奪われた。
なんとかしたいと思うのも事実だが――快感に浸っていたい、と言う欲求も本音だった。

(ハァっ……どうすればいいんだよ)

本当に憎いだけなら拒絶するだけなのだが、あろうことか三姉妹は、実はいい人間たちなのだ。
趣味にこり過ぎていることや人の体を常時狙っていることを除けば、根はいい娘たちなのである。
しかも、三姉妹全員が美麗なのだから、色々なことを除けば、彼女たちと関わるのも、その『モノ』になるのも――悪くはないと思っている。

(でもでも、二ヶ月も戻れていないなんてっ、二ヶ月だぞ!?)

もっとも、本物である自分が二ヶ月以上も『唯川 竜也』に戻れていないのは、完全に行き過ぎだ。
休憩時間みたい五時間ぐらい戻れたこともあるが、ほぼ二ヶ月以上も――女の子だ。
しかも、この先の約束、他の姉妹たちとの入れ替わりも考えると、三ヶ月以上はこの状態が続く訳で――気が滅入るのも半端じゃなかった。

「リュウヤ、早く出てよう。…………私だってシャワー浴びたいんだから……ッ」
「わ、分かってるよっ。――ナタリア」

誰のせいだっと、突っ込みたいのを噛み締めながら我慢する。
未だに腰を含めた身体中がダルイ状態でケンカになった挙句に――再度犯されたら、数時間は立ち直れない。
既に似たパターンを経験した事がある竜也は、暖かい筈なの身震いを催した。

「分かってるん、だけど…でもぉ…ああもう!」

しかし、かなり『女』に慣れ切ってしまった竜也は、丁重に体を洗う癖が身に付いたらしく――
結局二十分ほど時間をかけて、体を洗浄してしまった。

「んっ…んん!あ…うぅ!み、惨めだぁ…あ、ん!」

……実は逆転セックスの余韻で愛蜜が再び滲み出てしまったため、さらに股間を洗う羽目になったのは、彼だけの秘密である。

「お、お待たせ」
「うん…分った」

そして、ナタリアと交代する。
不思議なことに、ナタリアは――『唯川 竜也』は怒らなかった。
からかう事もしないので、何かするかと身構えていた竜也には正直、肩透かしだった。
しかし、襲われないならいいや――と、随分繊細な乙女っぽいことを考えながら、洗面所に入る。

「あッ……ナタリアッ!! この服っ?!」
「ふぅんん~~♪んん、なぁにかな?ナタリアね・え・さんッ? 早く着替えないと風邪ひくよっ……ふふん~♪」

が――どうやら勘違いだったらしい。既に悪戯を済ましていたのだ。
ナタリアは意地悪く、鼻歌を歌って、誤魔化す。
正しく、小悪魔だ。

(こういうことかよ………これを穿けとっ………俺に穿けとっつつ?!)

用意していた服は、布地の多いホワイカラーの下着と、ピンクのパーカ。
そして一般的な紺色のジーンズ。
兎に角、出来るだけ恥かしくない服をチョイスしていた。
代わりにあるのは普通ではないコスチューム。
下着は薄紫でより布地が少なく、そしてそれ以上にインパクトのある上着――と断言していいのか、分からない――途轍もなく派手すぎる衣服。
畏縮した手を動かし、竜也は材質まで、入念に観察した。

「うう…いつの間に…買ったんだよ。こんな服」

上下共に黒い光沢が眩しい。
下はマイクロミニで特大のベルトが目立ち、上は袖なしでどう見てもおヘソを隠しきれない。
そればかりか、胸元も大きく開いたデザインで、最初から肌を隠す気がないらしい。
専門用語的に言えば、ボンテージ風の服装である。
鏡台には、あからさまなアクセサリーが数点――とんでもない一式だ。

「こんなの……着れっていうのかよ!?うわっ…こんなのブラが見えないか……?」

用意された服じゃないから着なくてもいいかと思い込みたいが、これで違うのを着たらどんな目に合うか。
竜也には分かりきっていたため、着替えることにした。
恥ずかしさのあまりに顔がピンクに染まる。

「こぉ…のお!あ…こなくそぉ」

巨乳をブラに収めるのが困難で、失敗するたびに惨めさが込み上げ、目が潤う。
それでも乳を綺麗に収めてから下を穿き、恥ずかしげな上着を着る。

(……ッ!!ブラジャーはうまく収まりきったけど、逆にパンツがほんの少しで見えるじゃないかッ)

いそいそと、誰にも見られていないに、身を隠すように穿く。
そして――。

「うう…くそっ――可愛ぃ」

鏡に映る『ナタリア』に毎度毎度ながら竜也は見惚れ、少し嬉しくなる。
ナルシストやオカマでは、絶対ないのに、こう彼女たちの身体で綺麗に着飾ると恥ずかしくもあるが、どこか誇らしい。
いや、自慢したくなる感情すらある。
その様子に、姿に、軽い絶頂を感じたのはナタリア(竜也)が――変なのか。
深く追求したくない。確実に再起不能になりそうで。

どうにかなってしまいそうなのに、慣れていくのが苦にならなくなっている自分に恐怖するナタリア――こと、竜也。
だが、それでも、やはり嬉しいモノは嬉しく、楽しいことは楽しく――恥かしいものは、屈辱だ。
瞬時に胸元と股座を手で隠そうとした。
 
「そもそも――何でこんなことになったんだ?ほんの気の迷いだったのにぃ」

大学受験に悩んでいた頃が懐かしいのか、竜也は滝のような涙が零した。
もう半年ぐらい前のことに意識を集中させ――ああぁ、なんであの時の自分は無計画だったのだろうか、無防備だったのだろうか、と――暗い感情を露わにする。

「うっ…ぐぅぅ……っ」

服装のイメージとは真逆の、保護意欲を駆り立てるような表情とため息を鏡で確認しながら、
竜也は過去を思い返した。

(7)
けして無能ではないが、大学受験の場合だけ、半端なく相性が悪かった唯川 竜也は、二回も浪人を続けていた。
既に親から最後通告され、もう後がない。
そんな、最悪な状況でも平然と家に遣って来たのが、彼の遠い親戚たち。
しかし―ーまさか、このお馴染みの来日が、竜也と三姉妹の運命を大きく捻じ曲げるとは、彼自身どころか、発端である長女のナタリアでさえ思いもしなかった。

「だ~ッつ!! もうダメだッ!!」

その日、竜也は頭を抱えながら、遠吠えを発していた。
また、勉強がはかどっていないのである。

「ん~~もう何だっていうの、よぉ…リュウヤ?」
「……!?い、いや何でもないよ、ナタリア……起こしてワリィー」
「あぁ……勉強がうまくいっていないのかぁ」

唐突にドアから覗いてきたのは、幼馴染とも言える遠い親戚のナタリア・ジェラルド。
軽やかで、派手やかなブロンドは、少し乱れながらも、高貴さを失わず。
乳房は山のように突き出ている。
削り取られたように滑らかな腰に、ふっくらと育った臀部。
その全てが完璧で――つくづく恐ろしい、美貌である。

「うう…頭いたいよぉぉリュウヤ――」

今は二日酔いのせいで余裕がないが、何時もの彼女は絵に描いたような自由人。
無邪気なウィンクをするのが癖な、可愛いところがある女性なのだが、間違えて呑んでしまった
昨日のカクテルが尾を引いているらしい。
うんうんと、苦悩している様は可愛いやら、綺麗やらで、すごく困った。

(うっ…少しは自分の魅力も――いや、止めておこう。無意味だ……)

起きたばかりなのに衣服をきっちり着ているのは、そのまま眠り込んでしまったからに他ならない。
アメリカ人にも関わらず、彼女はアルコールが極度にダメなのだ。
その上、甘え癖があるので、何度男として泣かされたことか。

「本当にお酒に弱いなぁ…ナタリアは…」
「ううぅ…痛い。ずきずきするぅ……」

時刻は、もう昼の11時ぐらい。
父は仕事で、母は美容院。次女も、三女もお出かけ。
特に次女のアンナにいたっては、とある男に弟子入りしたとかで、最近なにかと忙しかった。
と、言うわけで―ー今は、二人っきりだ。

(相変わらず綺麗だよなぁ。体も俳優みたいにグラマーだし……アメリカ人の成長力は日本人の比じゃないなぁ)

一度は諦めた初恋の相手が、ナタリアだった。
そのことを彼女は知らないだろう。
しかし、毎年、成長するナタリアやアンナを見ると自分が男であることが、よく分かった。
騒ぎだす息子を、彼女たちをおかずに何度もイかせたものだ。

(…って、いけない、いけない!!、今はそんなこと考えている場合じゃないだろう…っ俺!…まずは勉強だっ)

ざわめく煩悩を振り払い参考書に目を向けるが、先ほどよりも進まない。
いけないと思いつつも――湧き上がる邪な感情に――集中力が完全に萎えた。
おまけに、本調子を取り戻してきたのか、ナタリアがさらにくっ付いてくる。

「ちょ…邪魔すんな…っ!」
「まぁまぁ…これが問題?…って……なに、コレ?随分、簡単じゃないの」
「そりゃあアンタたちに比べたらそうだろうけど一般人には難しいんだよ……ああダメだ!!自信がでねぇよおぉっ!」

それご愁傷様ね、と締め括り、思いふけているナタリアの顔。
それなりに長い付き合いの竜也は、彼女が何を考えているのか察し、慌ててフォローする。

「あー、気持ちは嬉しいけど……」
「…え? あっ、違うよ。あたしたちが人に教えるのがヘタなのは、もう分かっているから…ちょっと
違う方法を考えていたのよ」
「――違う、方法?」

ナタリアたち三姉妹は所謂、天才だ。
長女も、次女も、そして三女のケイトすらもアチラの大学などとうに卒業している。
ナタリアは経済、アンナは考古学と物理学、そしてケイトは工学と、其々、特化しているのだ。
そして、そんな天才たちがいるなら、彼女たちに習えばいいだろうと、皆して言う。
だが、あまりにも優秀で、教える側とのレベルが離れていると返ってダメになるのだ。
教わった一週間後に、竜也は人生初めての知恵熱を味わい入院してしまった。
そういうわけで竜也は、彼女たちという劇薬に頼ることはなかった――が。

「あの…き、聞いてもいい…か…っ」

やはり偉才なのは知っているので、この状況を打破する方法を思いついたなら是非聞きたい、
と言うか聞かせて欲しい。
いや、お願いしますから聞かせてください――が、彼の正しい心境だと言えた。

「んー多分うまくいくと思うけど………そうだッ!…ねぇ、リュウヤ?」
「……なんだよ、突然改まって」
「あたしたちが、もう直ぐ日本に在住するって知っているでしょ?もし、あなたが良ければ一緒に暮らさない?暮らしてくれるなら、大学合格を手伝ってあげるけど」
「はいっ? えっ、あっ!?一緒に……?」

何故そんな話になるのか分からないが、何て魅力的な話なのだろうか。
自分を押さえる自信がないけれども、順風満帆なら大学生活と同時に美女たちとの暮らしである。
しかも、これは諦めていた恋へのラストチャンスでもあった。
気が付けば親戚同士というより、『家族』のような関係だったナタリアと、アンナ。
ケイトの場合は、それでいいかもしれないが、性欲の対象となれば話が違う。
肉欲の関係を求めるには――あまりにも、生ぬるいのだ。
だから、諦めるしかなかった。

(まぁ……絶対、俺を男としてではなく出来の悪い弟にしか思ってないんだろう――けど…)

しかし、今回の話は今までとは違う。
ナタリアたちはあまり深く考えていないだろうが、完全に竜也と三姉妹だけの生活。
その中で本当にどうしたいのか。
自分を見つめ直せるし、共同生活中に、ナタリアやアンナに自分を一人の『男』として認めさせることが出来るかもしれない。
断る理由はなかった。

「まぁ、大学に行ったら一人暮らし、しようかなと思っていたけどよぉー、大丈夫なのか?……その男と女性が一緒に暮らすなんて、いくら四人暮らしになるからって……マズイだろう?」
「ダイジョーブ、ダイジョーブっ。……他の二人も、あなたならOK―ッていっているし、あたしも竜也が居れば寂しくないしい」
「わあっ!バカッ!ひ、引っ付くなぁぁ、…むぐ、ムんんッ!?」
「んもぉー照れちゃって、あなたのそんなシャイな所がお姉さん好きようっ」

ナタリアは子供っぽく抱きつくと、その豊富な胸で竜也の顔を覆い隠した。

(俺はこういうところが……んん、嫌いなんだけどなっ!!……ああぁぁーストレスでどうにかなってしまいそうだっ?!男舐めすぎっつつ!!)

一層のこと、この身に宿る欲望のままに、泣き付く彼女たちを犯せたらどんなに楽だろうか。
だが、出来ない。
信頼されていることが分かりきっているのに、彼女たちを裏切るなど、下種の行いではないか。
進みたいという気持ちも偽り無い本心だが、守りたいと思う気持ちも、嘘ではないのだから。

「っむは!ハァ、ハァ……そ、それはそうと…そのナタリアが思いついた方法って何だ?」
「じゃあ、同居の件はOK-ッてこと!?……よっしゃあ、これで退屈しないですむぅーっ!」
「い、…いいから、教えてくれよ。 こっちは切羽詰まっているんだから……」
「分かってる分かってる。お姉さんに任せなさいって……」

オモチャゲットーな、ナタリアの態度に早々と後悔した彼だが――切羽詰っていることもあり――そのまま秘策を伝授して貰うことにした。
自信満々に胸を張りながら、ナタリアは部屋を出る。
そして、戻ってきた。
脇に、小さな箱を抱えて。
その作りの良さと色合いの派手さから宝石箱なのだろう。
実際、ナタリアが蓋をあげたら、綺麗な宝石のアクセサリーが幾つも入っていた。

「………っ?まさか占いやまじないって訳じゃないだろうなぁ?」
「近いっちゃあ、近いけど、……まぁ、…あえていえば『まじない』なのかな?」
「ハァー!? おいおい…ッ!!」

まぁ、騙されたと思って見てなさい、と人差指を唇に当てられ、ナタリアお得意のウインクをされては、怒りを抑え込むしかない。
悪女とまで行かないまでも、小悪魔な彼女に竜也は本当に騙されたつもりで行動を黙認した。

「コレコレ、これで準備万端」

取り出してきたのは、二対のシルバーアクセサリー。
ただアクセサリーにしては体につける部分が見当たらない。
両方とも真ん中に宝石が一つずつ嵌め込まれ、その裏側には鋭い棘の螺旋が存在していた。
唯一の相違点は、右手に持つ方の宝石が血のように赤く、左手に持つ方が深海のような青色――これで、何を始めるつもりなのだろうか。

(8)
「じゃぁーエイっ!」
「……へ?」

行き成り竜也の額を平手打ちするナタリア。
右手の感触が伝わる。
視界でも、彼女の手が自分のおでこを直撃していることを理解できる――と、なると。

「んぎゃあぁぁ――っ!? 死ぬぅ!? ……って痛く、……ない?」

当然、アクセサリーが肉や骨を貫通している筈だった。
しかし、不思議なことに痛みがまるでない。
むしろ、彼女の手の感触が心地よかった。

「………?……マジック?」
「う~ん、多分リュウヤが思っているのとは違うけど…マジックには変わらないわね」

またも謎めいた言葉と共に不適なウインクをするナタリアは、残りを己の額に叩き付ける。
竜也に行ったように、己にアクセサリーを突き刺したのだ。

(ない?…何がしたいんだ?…なんなの一体?)

しかし――やはり、あのアクセサリーは影もなく、消えていた。

「お、おいナタリア?――はおぉっ!?」

どくいん、どくいん――とくん。
問い出そうとした瞬間、これまで感じたことのない心臓の動きに、竜也は胸を押さえた。

「これっは………いった………んむむっ」

異変の正体を確かめようとした竜也の目の前にナタリアの顔が現れる。
口で言葉が作れないばかりか、息すらも出来ない。
――キスをされたようだと、数秒後に理解した。

(ん…んだよ…こ…この感じ…っ?)

何故か体が動かなくなり、視界がぼやける。
接吻されている感触すらも遠のいていく。
その中で竜也は見た。
彼女の額に消えた筈のシルバーアクセサリーの紋章と青く煌く鉱石の姿を。
そして、竜也の意識は体から途切れた。

「んん………っよし、成功、成功」
「……ん?…何だ、ったんだ今の…え、俺? えっ?え?えぇぇぇ、お、おれええぇーっツ!?」
「ふふ、入れ替わり成功、どうあたしになった気分は……?」

意識を取り戻してみれば、竜也の視界には、『唯川 竜也』がいた。
ウィンクをしている。
自分自身が目の前にいるのだから、当然、偽者となる――が、ここまで他人に似せられることは
可能なのか。
服装まで、同じである。
間違いがない間違い探しをされているみたいな理不尽さに、竜也の脳が軽くショートした。

(――俺!?何で?ナタリアは、どこ!?……ん? 入れ替わり?成功? あたしに……なった?)
「………っ!?」

取り合えず起き上がった竜也に不快感が、違和感が、訪れた。
衝動に身を任せ、ゆっくりと、視線を下に向ければ、そこにあるのは、巨大な二つの山。
女の乳房が、揺れていた。

(――っ女!?)

さも当たり前のように存在している巨大で美しい双球は間違いなく、女性の乳房だった。
恐る恐る触ると、確かに自分自身とシンクロしている。

「…ほん、もの……?」

想像以上に柔らかく、不可思議な力強さがあった。
身体の一部だと認めるしかない。 
深く指で踏み込めば、踏み込むほど、感触が明確に伝わってきて、慌てて手を離す。

「え…ええ?な、なにこれ…っ!?」

右手をお尻に向かわせ、股間には左手を宛がう。
お尻に到達した手から、知れるのは男のごつごつしたお尻ではない。
まったく性質が異なっている柔軟な――脂肪のようなと言える――肌質である。
股間に至っては、あるべきモノが喪失していた。

「えッ、えッ、冗談だろ……ッ!! なんで、嘘ぉっ!?」

声すらも高く、どこか、そそられるモノへと変貌している。
気が付いたら体の全てが、『女』に変化していた。

「あっ…あぅ…んっ…?」

懸命に自身に起こったことを知るために竜也は眼下を見やる。
伸びた手足はモデル以上に淡麗。
肌など作り物かと思われるほど、痣もシワもない。
ぷるぷると揺れている乳房の大きさは、まるでナタリアのような――。

「アレ、この乳って…それに声もっ…え?…まっ、まさかでも――うぇ!?ナタリア?」

記憶の中の女性と今現在の肉体の特徴が一致したとき、先ほどの、もう一人の自分の言葉が頭を過ぎった。
そんな彼の様子に満足したのか、偽の『唯川 竜也』が近づき返答する。

「そうあたしがナタリアで、あたしの姿をしているのがリュウヤくんでーすっ」
「そ、そそんな……う、うそおォォォ?!!」

手渡されたのは、丸く長い手鏡。
そこには平常時のイメージではなく、オロオロと鏡を覗み込むナタリアの姿、が。
そのギャップから思わず心臓が弾んだ。
しかし、持った手とは反対の手を振ると、ナタリアも、手を動かし――その顔は恐怖に引き攣る。

「うぇ!あうっ…!?ううぅ…っやっぱりィ、ナタリアっ!?俺がっ!?」

試しにぎこちなく笑えば、鏡の中のナタリアも、覇気のない笑顔となっている。
自分の頬を捻れば、彼女も自分の頬を抓り、痛そうに顔を歪めてから、手を離す。
竜也も痛みを感じ、抓るのを止めている。
これは、もう――決定的だ。

(――そんなっ、でも、でもおッ!)

ありえない、あってはいけない、ありえるはずがない、
だが、現実は常識を否定している。
改めて自分にそっくりな男を、竜也は見つめ――叫んだ。

「俺たち入れ替わったのかぁぁ!?」
「YES――そうなんですうっ!」

「どう凄いでしょこのアイテム? このアイテムを互いにつけている者同士で魂の交換が出来るのよ、あたしのお祖母ちゃんから貰ったの」
「どうやって……いや、それよりもどうしてこんなことをっ!?」
「えー、何をいっているのよ?これであなたの受験も楽勝でしょが………」

自分の外見をした彼女は何時も通りの雰囲気で、話を進めた。

「こうすれば受験の際に、あたしが代わりに受ければ問題解決でしょ?」
「いや、いやッ!? おかしい、何かがおかしいッ!? 第一にどうやって………」
「もうだから、あのマジックアイテムのお陰なんだって…リュウヤはお馬鹿さんなんだから」
「そもそも、そのマジックアイテムって何なんだよ!? そんなマンガじゃあるまいしいぃ」
「それが実際あるんだなぁ、本当の魔法が。現にあたしたちのお祖母ちゃんが魔法使いだったし」
「んなぁ、バカなッつ!??」

――ナタリア曰く、この世には科学では説明出来ないことが多くあり、オカルトと称されるモノの中には、本物も存在しているらしい。
その証拠に彼女たちの祖母は数少ない魔法使いで、家族や親しい人たちのみに、その力を見せていたとか。
そして、強い魔力を宿していた彼女が、幾つかの魔法と魔法アイテムを譲り受けたのだと。
信じられない話だが、現に肉体を入れ替えられているのだから、信じるしかない。

「男って、一度なってみたかったのよねえぇ。――まぁ、このナタリアお姉さんに任せておけば一発合格間違いなし!大船に乗ったつもりでまかせなさぁーい!……でっ、それはそうと、この後アンナやケイトを二人で騙して遊ばない?うふふ…」

自信満々に微笑んでいる自分の姿に、ナタリアの姿がダブるのは、やはり魂が違うせいだろうか。

――こうして、ハチャメチャ姉貴分のナタリアによる大学合格作戦が断行されたのだった。

(9)
(親に模擬試験の結果を見せて同居を納得させたのは良かったけど、ことの真実に気がついたアンナとケイトにも入れ替わりを望まれるし、散々、おちょくられた挙句に………性行為までやっちまうなんてえ!!ぁぁああ、大学合格は間違いないのにぃ…何でこんなことになるんだあッツ!??)

二回浪人し、親から最後通告を渡され切羽詰っていた。
だから現実から逃げたかったのである。
しかし、だからと言って、『ここまで』の非現実になるなど、思ってもいなかった。

(はああ…しかも、アンナ相手だと…俺…自分から盛っちゃうんだよな――ううぅ…男として自信があ…ぁ…っ)

比較的まともなアンナ相手でも性行為をやってしまう。
むしろ、ナタリアとケイトよりも回数が多く、しかも、自ら望んでしまう回数も桁外れだった。
最早、自分が男である方が、疑わしい。
――今だって、重圧感ある乳房を揺らしているのだから、情けないこと極まりなかった。

「ああ…男なのに胸が重いって……なんなんだ。これ…」

重い足取りで、胸やヒップを弾ませながら、竜也はリビングに向かう。
本物のナタリアを含む三姉妹は、その優秀な頭脳を元に50代のおっさんを鼻で笑えるほどの財産を所有し、その財で建設した住まいは4人暮らしでも寂しいぐらい巨大だった。
そんな豪邸のリビングのドアを開けてみる。すると――。

「おはよう――竜」
「おはよう、竜也お兄ちゃん」

出会って直ぐに、中身を――ボンテージ風の美女が竜也だと――言い当てたのは、このナイス・
ボディの妹たち。
姉同様にグラマーに成りつつある次女のアンナと、まだ幼い三女のケイトである。

「まったく、また姉さんに体を奪われたのか…………」
「ううぅぅ……」

優雅にコーヒーを飲みながら目の前に食パンと目玉焼きを置いてくれる優しさが、心に染みた。
アンナは三姉妹の中で一番まともだ。
だから、あまり性行為を強要してこないー―の、だが。

(ハァ、やっぱアンナは心休まるなぁ……っていかん! いかん! 危なくときめく所だった!!)

慌ててロング・ヘアーのブロンドごと顔を左右に振り、内なる乙女を追いやる竜也。
しかし、完全に冷め切れなかったのか、無意識にアンナを見ていた。
凛とした顔と、短い赤毛が、実にいい。

「ん…どうしたの、竜?顔に何か付いてる?」
「べ、別に…なんで、も…ない…」
「そう、ならいいよ」
(――や、ばい…意識すると、胸が…うるさぃ……)

アンナの場合、確かにナタリアやケイトよりは、セクハラやセックスなどをしてこない。
が、その分、一番男前で、一緒にいると、何時の間にか女のような思考に陥ってしまうのだ。
揺らがない凛々しさと力強さが、女として蹂躙されている竜也には、あまりにも魅力的なのである。
三姉妹の中で一番まともながら、一番厄介な女性。
それがアンナだった。
何を隠そう竜也の『初めて』が――彼女である。

「んでもって犯されちゃったと………まぁ、アンナお姉ちゃんは男が似合うように竜也お兄ちゃんは異常に女が似合って、可愛いから仕方ないけど……ハムハム……」
「――似合ってたまるかッ!」

食事をしながら、会話に入り込んだのは、ミニ・ナタリアこと、三女のケイト。
容姿は長女の姉譲りだが、唯一瞳のカラーだけが次女と同じでブルーである。
朝っぱらから少女が喋る言葉ではないが、彼女も異常な性行為の中毒者。
むしろ、三姉妹の中で一番趣向が激しい。
なんでも女になった竜也に激しい興味や面白さを感じたとかで、セックスだけに飽き足らず、
コスプレや芝居なども強要し、竜也を心身ともにズタボロにするのだ。
自分の半分も生きていないケイトにまで『女』扱いされる竜也は――もはや、深みから抜け出せないのかもしれない。

「ん~ん、……やっぱリュウヤの体はいいや」

そして最後に登場したのは竜也になっているナタリア。ご機嫌麗しい状態だ。

「おはよう、姉さん。 にしても、キミも昨日、体返してから僅か数時間で取り返されるなんて……気が抜けすぎていないか?」
「久しぶりに、ほっんとうに久しぶりに元に戻れたんだ!!油断してもしょうがないだろうがッ!
――それはそうとケイト明日からの入れ替わりなんだけどぉー」
「……譲らないからね」
「いや……あ、でも」
「譲らないからね、ナタリアお姉ちゃん」
「……あうぅ……」

最初はナタリアから始まった入れ替わりも、アンナは師匠から教えられた奥義で、ケイトはナタリアとアンナの入れ替わり現象を研究して作った入れ替わりマシーンで、それぞれ強要してくる毎日。
日に日にエスカレートしていき、彼女たちの『男』の欲望は、留まることを知らなかった。

「さて、今日は何して遊ぼうかなっ」
「それならテニスでもする姉さん?」
「いいねぇー、運動大好き!!」
「ちょっと何話をまとめているんだ!!――っひぃあ!?これは……っ!?」

意気揚々と姉妹?――で、話し合い、今日のプランを立てていくナタリアとアンナ。
当然抗議する竜也だったが、次の瞬間には白い縄でグルグル状態ではないか。

「る、ルナ……お前まで!い、いい加減にしろぉぉ!!」

後ろを見ればケイト作のクモ型ロボ――AI名ルナが、その顔を開いて、白い縄を飛ばしていた。

『申し訳御座いません、マスターの、命令で、連行させて、貰います――竜也さま』
「頼む、放してくれっ!!つうか、離せっ!!」
『スミマセン、それは――出来ません』
「そんな後生なぁっ、ぁぁあ、俺のかぁらぁ、だああぁッ!!?」

ここには人権がないのかと、叫びたくなるが、既に二人の姉妹は我関せず。
囚われた竜也の前にケイト、そしてルナが迫る。
不気味な笑みと眼光を持つ少女に、年上の威厳無く彼の体は竦んだ。

「じゃあ予定より早いけど、お着替えゴッコしようよ――ナタリアお姉ちゃんの身体で」
「あぁぁ、着せ替えっておまっ……いやだあっ!!……最後にはまた何かするんだろうっ?! 第一に外見が、お前らなら俺である必要なくない!?」
「もぉ、竜也お兄ちゃんが可愛いくなるから、いけないの――可愛いすぎる竜也お兄ちゃんが悪いの――だから我慢しなさい!メッ!」
「どこの独裁者っつ!? あぁぁぁ、イ、…いやぁだあぁぁ――!!」

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………………………………………………
………………………………………
…………………………
………

「やぁ~~!! かわいいー!! 似合う似合う……ルナっ」
『……了解、カメラモード19で、撮影、――開始』

――ハシャグ姿ではしゃぐ姿は童話の中の少女である。
配下すらも従えている魔王な筈なのにケイト・ジェラルドの笑顔は眩しかった。
そして――。

「………もう、殺してくれ、ぇ………ヒグ、……グスん――っ」

猫のコスチュームに身を包んだ竜也が、腰を低くして、泣いていた。
頭には猫耳。首には首輪と鈴。
そして、体にピチピチに張り付く、猫を模したレオタードの衣服。
すっかり、と言うか、完全に体は猫娘と化してた。

「く…こ…この…っは…恥か…しぃ」

――恥である。
竜也の心に、またしても、許し難い恥辱が刻まれた。

(クス、まだまだ――お兄ちゃんはもっと魅力的になれる。私がもっともっと、女らしくしてあげるね♪今日は深夜に3Pになるように仕向けて、私の次はアンナお姉ちゃんの番だから、竜也お兄ちゃんのほうから求めるようにセッティング……あぁ、マインド・コントロール装置の首輪も作らないとぉー、もぉー退屈しないけど忙しいなぁー…っえへへ)

魔王が、魔王的なことを考えながらも、顔に無邪気な笑みを貼り付ける。
長女が禁忌に誘い込み、次女が深みに嵌らせ、三女が止めを刺す。
これが唯川 竜也とジェラルド三姉妹の日常風景だった。

「にゃっ…にゃにゃ、にゃん~~っ!」

朝一番から年下の娘に命令され――ナタリア(竜也)は、猫の鳴き声まで発した。

続く……?

小説

Posted by amulai002