【投稿小説】 謎の少女ヒーローを追って
作:葉月/リーフ @Lief_Sousaku
イメージイラスト:シガハナコ
それは、何気ない日のある日のことだった。
「大丈夫!すぐ帰ってくるから!」って言ってた15歳の姉「碧葉」の帰りが遅い。
姉さんは小学生の俺のことを一番理解してくれた。
15歳でありながら家事や料理をこなしたり、運動神経バツグンだからカッコよくて、俺の憧れだった。
俺はそんな姉さんの帰りを待ち続けていたが、テレビには信じられない事実が映っていた。
それは、俺の姉が事件に巻き込まれて命を落としたことだった。
信じられない、あり得ない、認めない。
「帰ってくる」って言ったはずなのに。
「うぅ…うあああああああああぁぁぁぁっ!!」
小学生の俺はその現実を受け入れられずにただ泣くしかなかったのだ。
そしてその後もその後も、姉がいない生活なんて信じられない、俺はそう思いながら過ごしていた。
そんなある日、俺のところに1人の女の人がやってきた。
女の人は黒色のスーツを着こなした長くて深い青紫の髪の凛とした女性で、年齢は20代に見える。
「君は…?」
「私は君の姉さんの友。姉さんと友達の頼みで、これを渡しに来たわ」
女の人は俺にある物を渡した。
それは、俺の姉さんがずっと大事にしていた猫の肉球の形をしたキーホルダーだ。
無くしてしまって焦ったからすごく嬉しくて、思わずお礼を言いたくなった。
「これは…姉さんの…ありがとう!」
「そう。君の姉さんが残してくれた。これがあれば姉がずっと見守ってくれるに違いない」
女の人は俺の頭を撫でて、俺は姉さんに頭を撫でられた感覚を思い出した。
「君、名前は?」
「彗月千夜(すいげつ ちや)。私は忙しいから帰るけど、これだけでも覚えて」
千夜と名乗った女の人はそう言ってそのまま去って行った。
俺は千夜を見送った後、そのキーホルダーをじっと眺めていたのだった。

姉の訃報と、謎の女性が俺にキーホルダーを渡してから数十年後。
この俺、「甲斐 貢(かい みつぐ)」は姉さんに憧れ、彼女の想いを継いでから刑事になった。
最近、この街では「正体不明の鉄拳制裁女」が法では裁けぬ悪人を制裁しているという噂が広まり、俺はこの事件を調査している。
それと同時に、俺も最近寝落ちが増えたり、夢の中で見知らぬ技を使って悪人と戦っていたなんてこともあった。
不思議なことってあるんだな…。
そんな調査中の夜のこと、俺は持っていたキーホルダーがふと光っているのに気づいた。
「……?」
手に取ると、頭の奥に奇妙な映像が流れ込んでくる。
それは、姉・碧葉が亡くなる直前の記憶のようだった。
暗い路地、苦しそうな碧葉、そして…彼女に手を伸ばす謎の人影と、その人影に飛び掛かる翼を持つ蛇のような姿の生物。
「お姉ちゃん……?」
俺はハッとしてキーホルダーを見つめた。何かの見間違いか? それとも…?
俺が刑事になった直後から、周囲で奇妙なことが起こってる気がする。
例えば…誰かに見張られているような気配を感じたり。
まるで「姉の死の真相」に近づくことを、何者かが阻もうとしているかのように。
すると、何かを感じ取ったかのように俺のキーホルダーが光った。
「キーホルダーが光った…うわぁ!」
俺は驚き、その場で意識を無くしたのだった。
聞き覚えのある誰かの声と共に…。
私は碧葉。
とある事件によって死んじゃったけど、何だかんだで私の大事にしてるキーホルダーに宿っちゃったみたい。
今は貢を見守ることしかできないけど、貢がこうやって眠ってる時に限って目を覚まし、キーホルダー越しから貢に憑依してなんとか動かせるんだ。
それと、特殊な力の敵に対してはこんな感じですぐにその力を感じ取って憑依できるんだ。
それと同時に私の、いや『貢の』身体に変化が起きた。
身長が縮んで10代半ばの細めな身体になっていき、髪も伸びると同時に、顔立ちも幼さを感じさせる女の子のものになって、胸とお尻も程よく膨らんで(少しはあるんだからね!)年相応のスレンダーな身体を作り出す。
それと同時にキーホルダーはチョーカーになって私の首元にくっつき、服も変化してへそ出しのトップスとホットパンツの上からパーカーを身につけた活発なスタイルになる。
そしてさらに、青く光る猫の耳と尻尾が生えてぴょこんと揺れ動くと、私の変身は完了した。
「へへっ、今回も行くよ!」
私はそのまま外に出て、法で裁けない悪の反応を感知してそのまま向かったのだった。
私は、反応を感知してして路地裏に来た。
そこでは一人の男が倒れたもう片方の男を足蹴にし、赤黒い何かが内部で蠢く瓶を手に持っていた。
「君、何してんの」
「せっかく裏で稼いで手に入れたんだ!これで俺は…」
「これ、危険なものじゃないの?どこで手に入れたかはわからないけど、あなたは始末してもらうよ!」
「じゃあまずはテメェからだ!力試しといこうじゃねェか!」
男は瓶を開けて中の赤黒い何かを飲み込むと、男の身に変化が起きた。
男の全身がワイヤーフレームのようになり、身体が段々と変化していく。
変化が終わると、男は爬虫類のような頭と尾と金属のように硬質化した身体を持ち、メッシュ変形のように両腕と背中から結晶状の鋭い刃が生えて全身にノイズの走った大柄な怪物へと変化した。
全身にノイズが走っている上、ワイヤーフレームのような質感なので、不安定なようにも見える。
「グァァァァァァァ!!」
怪物は雄叫びをあげて私に襲いかかったけど、私は咄嗟に飛び上がり、攻撃を避けた。
「そこだっ!」
私は飛び上がり、右手に銃を持ってから怪物の頭上に3回魔力の銃弾を放った後に踵落としを決め、ダメージは無かったもの怪物は思わずよろめいた。
「少しはやるようだな…」
怪物は私に鋭い爪を立てて襲いかかったけど、私は弱点の場所に気づいた。
そう、正面は背中と比べて装甲が薄いのだ。
「見えた!これで…仕留める!」
私は怪物の懐に飛び込み、懐に隠したナイフを取り出し、光る刀身を伸ばして長剣型にし、怪物の腹を切り裂いた。
「グアァァァッ!?」
「お前…生意気なんだよォォッ!!」
「これで、決めるよっ!!」
私は飛び上がり、よろめく怪物の脳天に強烈なキックを叩き込むと、怪物は元の男の姿に戻り、目を回していた。
「ふぅ〜、お仕事おーわりっ!」
私は男をロープで縛り、本部の近くの人目のつかない場所に行って貢の姿に戻った。
その後、私は浮かれながら自室に帰って眠りについた。
そして翌日、自室の中で俺はようやく目を覚ました。
「ん…もう朝か……」
俺はいつものように目覚めたが、不思議なこともたくさんあった。
それは夢の中であの鉄拳制裁女と同じ動きをしている自分の姿を見ていたことだった。
「なぜ俺はこんな技を知っていたんだ?」
それに鑑識の協力を得て、俺は鉄拳制裁女の指紋と俺の指紋が完全一致していることを突き止める。
「俺の身体を使ってるのは、誰だ……?」
さらに、目覚めるたびに「覚えのないアザや傷」「武器を握ったような掌の痕跡」が残っている。
「姉の死の真相」と「キーホルダーの秘密」。
「俺は……何なんだ?」
葛藤した俺はよくわからないまま仕事を続けて、よくわからないまま一日を終えた。
そして翌日、俺は鉄拳制裁女を追ううちに、俺はある路地裏に来た。
「おかしい…昨日は行った覚えが無い場所なのに、何故か覚えてる」
手がかりを見つけるたびにフラッシュバックが起きる。
そこに来ていたこと、そこで異形の怪物に姿を変えた男と戦ったこと、その男を取り押さえたこと、通るたびにその全てが頭によぎった。
俺はそのことで頭がいっぱいで、しばらく眠れない日が続いた。
そしてある日、俺は調査に行くのだが、本部の監視カメラの映像に思いもよらないものが映っていた。
そこに映っていたのは……鉄拳制裁女が俺に姿を変える様子だった。
「え……俺は、アイツなのか……?」
事件を追いながら自身の記憶を探るうち、俺は姉さんの死の記憶が曖昧であることに気づく。
「姉さんはどうやって死んだんだ?そして、俺の身体を使っているアイツは誰なんだ?」
自室に帰ってからそれを考えた瞬間、激しい頭痛と共に記憶の断片がフラッシュバックする。
「ッ…!」
俺は痛みで思わず頭を押さえると、俺の身長が縮み、姿も見覚えのある少女のものになっていく。
変化が終わった後、目の前の鏡に映る俺の姿は自分のものではなく、姉の碧葉の姿だった。
その時、突然何者かの声が俺の脳内から聞こえた。
『あっ、おーい、貢?聞こえてる?』
「その声……もしかして」
『そう!私だよ!姉の碧葉だよ!』
「姉さん…?」
鏡に映る自分と話すかのように、俺と碧葉の話は続いた。
『そうそう!私は本当は死んでなくって、事件に巻き込まれてからキーホルダーになっちゃって、君がそれを持った時に君と融合しちゃったみたい!』
「姉さん…!色々と聞きたいことがことがあるから、聞いてほしい」
『いつでもいいよ?』
「最近噂になってる鉄拳制裁女について、気になってることがあるんだ。誰かが俺の体を使ってるような気がして、ずっと気になってたんだ」
『あー……私、もしかして噂になってる?』
「それって……。」
『そう!何を隠そう、噂の鉄拳制裁女とはこの私のことでした!』
俺は驚きを隠せなかった。
噂の鉄拳制裁女の正体が、俺の身体を使ってる死んだはずの姉さんだったなんて。
「なんで俺が変身してお前になってたんだ?」
『私が変身してる間、君の意識は無かったでしょ?私の変身は、私の意識が表に出る瞬間に始まるんだよ。』
「確かにそうだな……。」
『それと、私からのお願い事を聞いてほしい』
姉の目的は復讐ではなく、「自分の死の真相を暴くこと」。
しかし、彼女が制裁してきた者たちの中には、「姉の死に関わった黒幕と協力していた人」が潜んでいた。
俺と姉さんは対立する。
「お前の制裁は認めたいが、俺は法を守る刑事だから、仕事の事情で認められない」
『なら、あんたの法じゃ裁けないヤツはどうする?』
姉さんは、俺を説得しようとする。
「お前が俺を導くなら、俺もお前を導こう」
『……譲れないわよ?』
「なら、譲れる方法を探すまでだ」
俺と姉さんは、ひとつの身体を共有しながら、協力して事件を追うことに決める。
姉さんは「闇の裁きを行う者」として、俺は「法を守る者」として。
その夜、姉が目覚め、刑事の身体で鉄拳制裁女に変身する。
『行くわよ、貢』
「……ああ、行こう」
こうして、『一つの身体に二つの意志を宿す刑事』の戦いが始まったのだった。

















































































































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