【投稿小説】男子高校生だけど、スーパーヒロインとして宇宙で戦うことになりました。後編 ~桃源郷からのふしぎな種~

小説

麗音(レイン)さんから投稿して頂きました!イメージイラストはつぎさん♪
前編はこちら https://amulai.blog/?p=28686

元々、僕はただの男子高校生だった。
 
成績が別段いいわけでも、スポーツが得意なわけでも、芸術における才能があるわけでもない。
漠然とした将来への不安を抱えながらも、学校での授業を退屈だと思ってやり過ごし、なんとなくゲームや動画視聴をして過ごす、惰性に満ちた日々。
 
そんな日々は夏のとある日に転機を迎える。
 
「…専門家は『月面への移住が現実化する大きな一歩だ』、とコメントしています。」
 
テレビから流される朝のニュースを耳に挟みながら、寝ぼけた意識のまま朝食を口に運ぶ。
 
「続いて天気です。流星群のピークである今夜、雲もなくこの街でも観測しやすい天気となるでしょう。
今夜はお友達やお子様を連れて観測に出てみてはいかがでしょうか。」
 
「流星群、かぁ…」
 
自分でも理由がわからないが、天気予報の声が耳に引っかかった。
何もしなければ、今日も変わり映えのない一日として終わるだろう。
 
正直、刺激を求めている自分がどこかにいた。
 
「…ねえ母さん」
 
何かに導かれるように、思わず口を開く。
 
「ん、どうしたの?」
 
唐突な僕のつぶやきに、僕の母はきょとんとした顔をしている。
 
幸い、両親とは別段仲が悪いわけでもなく、良好な親子関係を保っている。
親子仲が良いのが、強いて言えば僕の取り柄かもしれない。
 
「今夜ちょっと、遅くなってもいいかな?
今テレビで言ってた流星群、見に行こうかなと思って…」
 
「あら?アンタが急にそんなことに興味持つなんて珍しいじゃない。
わかった、帰りあまり遅くなり過ぎないようにだけしてね。」
 

「うん、ありがとう母さん。
さて…もうバスの時間だからそろそろ行くね?」
 
「いってらっしゃい、気を付けてねー。
あ、もし取れたら写真撮ってきて?私も見てみたいし」
 
「わかった、行ってきます…!」
 
鞄を持って外に飛び出す。
その日は何か違う一日になるかもしれない、という期待が確かに胸にあった。
 


 
放課後。
 
日が落ちたころ合い見計らって街の中心を流れる川の河川敷を訪れた。
同じように、流星群を見ようと家族連れやカップルが何組か集まっている。
 
河川敷には桃の木が植えられており、この街の夏の風物詩でもある青葉が、夜風を受けて静かに揺れていいた。
 
しばらくして、
 
「さて…そろそろ…」
 
ニュースに載っていた時刻となった。
期待に胸を膨らませながら、上空を見上げると、
 
「わぁ…!」
 
一本、また一本と空に流星がかかる。
 
テレビや動画で映像を見たことはあるが、映像からは想像できないほど透き通った光。
やはり実物を肉眼で見るのは違う。
 
天の川を流れるように走る流星たちの姿は、平坦な日常生活では感じることのできない感動を喚起する。
 
「…っと、そうだ、写真写真…」
 
ふと母の言葉を思い出し我に返り、写真を撮ろうとスマートフォンを構えた、その瞬間だった。
 
ピカッ!
 
「!!」
 

天の川を流れていた流星のうち一本が、強い光を発したかと思うと、こちらに向かってくるように光が強まり、
 
ドンッ!!
 
河川敷に着弾するように落ちてきた。
ちょうど僕の左斜め後ろ、といったところだろうか。
 
「わぁぁぁっ!?」
 
余りの衝撃に、思わず体制を崩し尻もちをついてしまった。
 
「「きゃぁぁぁぁっ!!」」
 
流星群を見に来ていた他のギャラリーは、皆パニックのあまり逃げてしまった。
かく言う僕はというと、衝撃で恐怖のあまり固まってしまって、しばらく尻もちをついた状態から固まって動けないでいた。
 しばらくすると河川敷には僕以外誰もいなくなり、静寂が訪れた。
夜風が桃の木を揺らす音だけが河川敷にこだましていた。
 
「…」
 
緊張がほぐれ、動けるようになった僕は振り返って流星が落ちてきた先を見つめる。
 
まるで吸い寄せられるように、落下点に歩み寄る。
 
「こ、これは…」
 
そこで見つけたのは、不思議な形をした隕石の塊だった。
 
「なんだこれ…
桃…?みたいな…」
 
隕石はまるで大ぶりの桃の果実が真っ二つに割れたような形・大きさをしていた。
それだけではない、割れた隕石の中央にまるで種のように丸い何かが顔を見せている。
 
「…天の川を下って、桃が流れてきたなんて…
なーんか…どこかで聞いた御伽噺みたい…」
 
そんな独り言をつぶやいていたその時、
 
「!!
あの種…光って…!」
 
中央の種のようなものが淡く明滅を始め、
 

「!!」
 
不意にこちらの方に飛んでくると、胸のあたりに飛び込んでいるようにして、僕の身体に当たる。
 
「熱いっ…!!」
 
胸のあたりに一瞬、燃え上がるような熱さを感じる。
飛んできた種を振り払おうと、胸のあたりに目をやると、
 
「あれ…?っ…!」
 
制服のシャツが焦げている様子もない。
種の光はむしろ、シャツの中から透けているように見えた。
 
「うそ…!?」
 
シャツのボタンを開け改めて自分の身体を見ると、
 
「そんな…」
 
種の光は、僕の皮膚の奥から発されていた。
まさか、僕の身体の中に入ってしまったというのか。
 
「なんだよこれ…」
 
光が収まり、何事もなかったように夜の静けさが戻ってくる。
胸の中には、まだ淡く熱が残っていた。
 
 
 
次の朝、僕は不安げな顔で自室の鏡を覗いていた。
 
「…」
 
胸に手を当てる。
胸の中に熱がこもっている感覚はまだ少しだけ残っていたが、苦しさや具合の悪さは一切感じない。
 
「…火球によるけが人はいなかったとのことです。
次のニュースです…」
 
扉越しに、昨日の出来事を伝えるニュースが流れている。
 
「百弥ー?朝ごはん食べちゃいなさーい!」
 
「あっ、はーい!」

 
様子がおかしいことを悟られないように、僕は食卓へ向かった。
 
 
その日放課後、親に黙って病院に行き検査を受けたたが、結局異常は見つからなかった。
不思議なことに、胸のレントゲンには何も映っておらず、医者もどうして検査を受けに来たのか、終始不思議な顔をしていた。
 
気のせいだったのかもしれない。
僕はそう自分に言い聞かせて、いつもの生活に戻った。
 


 
しかし流星群の日から一か月ほど後、異変は起こり始めた。
 
この頃、自分では学んでもいない、ありもしないはずの知識が自分の脳内に存在していることに気づいた。
 
科学技術、生物、宇宙。
別に理科や数学が特段得意だったわけでもない僕の頭の中に、気づいたころにはなぜか存在していた知識。
それはもう、これまで難しいと思っていた高校の勉強が簡単だと思えてしまうほどに、自分の知能・知識量はいつの間にか急激に、超人的なレベルにまで発展していた。
 
そして僕は、その溢れんばかりの知識と知能をアウトプットしてみたい、という衝動に駆られるようになった。
 
模試や定期考査で突然ずば抜けた成績を残したことで両親や教師たちにも驚かれたが、それだけでは飽き足らず、夏休みが終わると同時に高校の科学部に入部し、その秋の科学コンクールに提出した研究でいきなり全国入賞を果たすなど、その衝動に突き動かされるように今までの僕では考えられないような成果を発揮するようになった。
 
しかし、それでもなお僕のアウトプット欲は尽きず、今度は地元の大学教授に話を聞いてもらおうか、などと考えていたある日。
 
「ん…?」
 
スマホの通知を見ると、個人用メールアドレスに差出人不明のメールが届いていた。
見たこともないメールアドレスであるが、迷惑メールフォルダにも入っていない。
 
メールの本文は文字化けしており読むことができなかったが、その下に1枚の添付ファイルが添えられていた。
 
どう見ても怪しいメールだったが、なぜかその時僕はそのファイルを開かなければいけないような直観を覚え、ノートパソコンを取り出してそのファイルを開いてみた。
すると、

 
「!!!
こっ、これは…!?」
 
そこに描かれていたのは、地球上では見たことのない技術で作られた様様な装備品の設計図だった。
 
使用者の身体構造を読み取って形を変えるボディスーツ。
拡張部位となって五感や身体能力を大幅に強化する身体モジュール。
ハンドガンほどのサイズのエネルギー銃。
それらを亜空間に隔離・補完しておくためのストレージシステムとその起動キー・転送装置となるデバイス。
 
どれも地球人から見ればオーバーテクノロジーの産物だ。
しかし、
 
「こ、これだ…!」
 
設計図を見た瞬間、自分はこれを作れる、そんな確信が湧き上がってきたと共に、これが自分の頭の中にあった知識をアウトプットしなければならない先なんだ、という根拠のない直感を得た。
 
その夜から、僕は自室の机を物置きから引っ張り出してきた机2枚で拡張し、添付ファイルにあった設計図に基づき装備品の制作を始めた。
地球上の科学技術では発明されていないような素材も、自分の頭の中にあった知識と設計図の内容とを組み合わせ、作り方を次々と理解してゆく。
 
無我夢中で設計図通りに作っていたが、それでも作りながらいくつかの疑問が常に付きまとっていた。
 
これを実際に使うのは誰なのだろう、と。
 
スーツ自体は身体構造にフィットするように変形できるものの、女性の身体向けに設計されているとしか考えられない部分がいくつかあった。
また、装備の転送や身体能力強化の最大出力を行うためには、体内に相当なエネルギーを持っていることが条件となり、一般的な地球人の持つエネルギー量ではおそらく足りないだろう。
 
そもそも、漫画に出てくるスーパーヒーローのようなパワードスーツを着て、一体誰と戦うのか。
 
開発には3ヶ月ほどを要した。
作っていれば、自ずとその答えが見つかるだろうと信じて作り続けたが、これらの疑問が解けることはなかった。
 
完成間近となったある夜。
 
「もう少しだ…もう少しで…」
 

その夜は、あと少しだけ頑張れば完成できそう、という段階だった。
 
ここまできて、これだけの作業を明日に持ち越すのはもったいない。
そんな気持ちからいつもより長い夜なべをしていた。
 
「…あとここの部分の接続を確認できれば…」
 
意識は朦朧としていたが、なんとか根気で最後の確認作業まで漕ぎつける。
 
「で、できたぁ…」
 
ついに、設計図に描いてあった装備、そのすべての再現品が完成した。
 
「ふあぁ…
 
…zzz…」
 
達成感とともに、一気に緊張がほぐれる。
僕は寝間着に着替えることもなくベッドに横になると、掛け布団もかける間もなく寝入ってしまった。
 
眠りについてから暫く経った時だった。
身体に異変が起き始めた。
 
「ん…///」
 
数か月前「種」が飛び込んだ胸の部分に、ピンク色の、蕾のような形をした光が現れる。
その花がゆっくりと開き始めると、全身が少しずつ変化してゆく。
 
「ふぅっ…♡///はぁっ…♡///」
 
身体は細身を帯び、身長が縮む。
 
「ん…♡///はぁっ…♡///ふぅっ…♡///」
 
胸が膨らみ、太ももが太くなってゆく。
着ていたワイシャツのボタンが外れ、その間から成長した女性形のバストがあらわになる。
 
そして、
 
「んんん…///♡
…ぁ…♡♡♡///」
 
服越しにもわかるほど大きくいきり立った股間がビクン、と脈を打ち、
全身を思い切り震わせると、何かが抜けていくようにみるみると縮んでいく。

 
「っ…♡///」
 
同時に、髪の毛がピンク色に変化し、髪型が変わったのをもって、身体の変化が終わった。
 
 
そう。
 
_朝起きたら、女の子になっていた。
 
「う、嘘…!?///」
 
ベッドから立ち上がり鏡を見つめた私は目を疑う。
 
「これが…私…!?」
 
一人称も、何も意識していないのに、「私」に変わっている。
 
「ど、どうしよう…///」
 
混乱し、目を泳がせていたとき、
 
「ん…?」
 
私の視界に、消し忘れていたパソコンの画面が目に入る。
 
「これって…」
 
メール本文の、文字化けしていたはずの部分。
 
「読める…!」
 
そこに書いていった意味が、スラスラと頭に入ってきた。
 
本文によると、メールの差出人は遠く離れた銀河に存在する惑星「トウゲン星」の科学者であること。
そこに住む知的生命体「ユートピアン」は植物から進化した種であり、宇宙に飛ばした「種」が異星人に宿り、エネルギー体の「花」を咲かせることで融合し、広く宇宙にそのDNAを残すこと。
私に宿った「種」は差出人の科学者、つまり私の「母」から生まれたものであること。
今太陽系に「カオティック」という怪物の危機が迫っているということ。
「娘」である私のためにスーツの設計図を託し、それを使って宇宙の平和のために働いてほしいということ。
 
地球上の常識ならにわかには信じがたいことだったが、私はそれを本能的に受け入れることができた。
 

「お母さん…」
 
遠い桃源郷の星に住むもう一人の「母」に思いを馳せながら、小さく呟いた瞬間、
 
「!!」
 
私の胸の中に星型の花が浮かび上がり、昨夜作り終えた菱形の起動デバイスと、共鳴するように明滅し出した。


 
この光は、スーツの「適合者」が現れたときに発せられるもの。
 
そう、適合者はほかでもない、私だったのだ。
 
「…今朝方、市内に正体不明の生物が出現し、暴れているとのことです」
 
部屋の戸越しに、ニュースの音声が聞こえてくる。
 
使命感に駆られるように、明滅する起動キーを手に取る。
そして内からこみ上げるエネルギーを解放するように、起動コマンドを叫ぶ。
 
_「トランスブルーム・ピーチ・スパーク!」

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Posted by amulai002